井川釣り大会
2003 名場面集
  2000.5.4.  吉田 シンヤ みっちゃん
 
 世間はゴールデンウイークの後半3連休の初日。 私が午前中の仕事を終えると同時に電話が鳴り、暇人仲間から「釣りでも行くか」の誘い。 連休初日の昼から動き始めても渓流は人だらけで、どれだけ釣りが楽しめるだろうか?とも思ったが、折角の連休なのに家でジッとしていては勿体無いので、とりあえず釣りの支度をして車を走らせた。
 まずはこれが無いと始まらないと、途中のスーパーに寄ってビールや酒やらを買い込んで、これまた無計画に大井川の上流を目指していく。 幾らか期待の持てそうな支流を見てまわったが最初の沢では7台、次の沢では6台もの車がすでに停めてあり、沢の車停めはまるで中古車展示会のようになっている。連休でどこの沢も釣人だらけなのだ。

 やっぱりと思いつつも落胆してアテもなく井川の街へと行くと、そこで第1街人発見!
某TV局某番組スタッフに成り済ましてかは定かではないが、山菜採りをする婆様と孫娘にシンヤが車から声を掛けた。 「何を採ってるんですかー?」 婆「アケビの芽じゃよ」 「どれどれ」
私達は車から降りてスーパーでは売っていないような色々な山菜について教えてもらった。
婆様と一緒になって私達に山菜を教えてくれていた小学生の孫娘が吉田の腕の剛毛に気付き、
「スゴーイ!」と言って吉田の腕をスリスリと撫でる。
 「これも食べられるんだよ」 山菜を教えてくれたお礼にこちらも教えてやった。
 この婆様達と別れた後、普段は通り過ぎてしまっている井川の街を飲み屋を物色しながら彷徨っていると...ん?
 「おおっ、デカいぞ!」 道路脇にある軒先の物干しには洗濯物ではなく大きなアマゴがズラリと並んでいるではないか。 通りがかりの近所のオジさんに尋ねると燻製にする為に干しているのだと答える。
見るからに養殖物であるが揃って大型である。と、いうより大きく育て過ぎたので燻製にするしかなかったのかも知れない。 それでもいつも小物のアマゴばかりを見ている私達には壮観な光景であった。

 井川渓谷へと続く道路脇には“釣り大会”のポスターが貼ってあり、まるでアテの無い私達を導いているかのようであった。 これに誘われ大会は明日であるがフラフラと会場へと向かってみると、すでに多くのキャンパーが車の脇にテントを張って宴の準備をしていて、それを目の当たりにして妙に喉の辺りに渇きを感じる私達であった。 まずは近くの支流を散策するがここもやはり人だらけ。しかしそんな事はもうどうでも良くなっていた。要は“今すぐ飲みた〜い”のである。
 明日の事はともかく、今日はとり急ぎここで寝ようかと堤防脇の原っぱに車を停めてテントを張った。
 場所さえ決まれば、もう晩飯の準備もそこそこに缶ビールの栓を開けてグビグビとやる。 
このときシンヤは勢い良く飲み喰いした為か、ベビースターラーメンの破片が舌に刺さり口のなかを赤く血で染めていた。
 「今日はもう飲まない方がいいぞ」 と心配した私が思いやりの言葉を掛けたが、シンヤは
 「この野郎!バカヤロ!」 「アルコール消毒だ!」と言って、さらにビールを煽っていた。
 そんなこんなでバカ話をしながらの宴会で夜は更けていき、翌朝は何やら辺りが騒々しくなってきて目が覚めた。
釣り大会の受付時間を前にして気の早い釣人が続々と集まってきていたのだ。
 昨夕、漁協の人に「放した魚を盗んでいく奴がいないか見張ってくれ」と冗談めかして言われていた為、会場ド真ん中で飲み散らかし寝ていた私達が朝になって慌てたのは言うまでもない。急いでテントやら宴の残骸を片付けた。
 結局、この後は近くの支流を散策するも相変わらずの満員御礼なので釣り大会会場に戻り、釣技熟達者である吉田が我々の代表として参加した。

 

kg岩魚
シンヤと私は堤防の上でビール片手に大会見物を決め込んだ。
 受付を済ました順に次々と釣人が陣取っていく。皆、スタート時間まで自分の位置に竿やらクーラーやらを置いての場所取りである。 もちろん吉田も場所を決めるが、狭い区間に大勢の釣人なのでどうしても立ち位置の間隔が狭い。吉田の立ち位置から隣の釣人の荷物までほんの2m程しかない。
 「これはスタートが見ものだぞ」 シンヤと私はお互いの釣人の間隔の狭さから何処かで喧嘩が起きはしないかと期待。
 「スタートと同時に隣とお祭り(糸絡み)だぜ〜ん」 セコンドの私達は吉田を呼び寄せ気付けにビールを飲ました。もうすぐゴングだ。一斉スタートの時間が刻一刻と近づくにつれ高見の見物をしている私達もワクワクとしてきた。
ドーーーン! スタートを知らせる花火が鳴り、釣人が一斉に餌を振り込む。 しかし、シンヤと私が期待していたような喧嘩などは無く。滞りなく大会は進行していった。
 飲ませが足りなかったのか吉田は隣のオジさんと和やかに話しながら釣っていて、これでは見ている方はつまらない。
そこで子供用や老人・婦人専用釣り場に行くとプールのような瀞で面白いほど釣れている。何処へ投餌してもワッと魚が寄ってくるのがよく見える。さらに掛かった獲物を引き寄せてくるとその後ろをゾロゾロと魚が追ってくる。
 釣りは初めてというオバちゃんが1kgを超える大きな岩魚をカツオでも釣るかのようにゴボウ抜きしているのだ。
それに子供や車椅子に乗った爺様だって大物が掛かればそのまま川に引きずり込まれそうになっている。
私達の渓流釣りの概念ではアリ得ないような微笑ましい光景がそこにはあった。
 普段、自分達がボロ服で釣っている為だろうか。渓流ベストにゴア胴長靴で偏光グラスを掛けた子供より、パジャマ姿でサンダル履きで竿を持つ子供をつい応援してしまう。
 この光景につられて私達も竿を振りたくなって1時間ばかり本流で大きく竿を振ったが、アブラッパヤ(アブラハヤ)を釣ったのみに終わった。 実はドサクサ紛れに大会会場から逃げた大物が釣れはしないかと淡い期待もあったのだが、結果それは甘かった訳だ。

自分が釣ったかのように
 さて大会参加の吉田はと言うと、小物アマゴを4〜5尾釣ったのみであった。 本当は我々の代表である吉田には優勝を決めてもらい、その全てをリリースするという快挙を成し遂げて欲しかったのだが、それは叶わぬ夢であった。
 さぁ、温泉にでも入って帰ろうかと荷物を積み込んでいると、な・な・なんと!極自然にさりげな〜く吉田とシンヤがビールを飲んでいる・・・。 「おぉい、また俺が運転かよ!」
どうやら彼らには、『ビール+温泉=帰りの車内で爆睡』の極楽方程式がもう出来上がっているようだ。


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