2004 名場面集 

狙えサツキマス

 2004.春  みっちゃん  


 僕が住む静岡県の大河川は西から天竜川、大井川、富士川である。そのうち天竜川と富士川でのサツキマス釣りという話は聞いたことがあり、特に天竜川の漁協では熱心でサツキマス稚魚の放流や寄付金、イベントや植樹など熱心に取り組んでいるようです。
 最も近い地元である大井川はどうかというと、ウナギ置鉤の外道として掛かったとか、橋から見えた程度にしか聞いたことがなく、むしろ安倍川でサツキ狙いの釣人がいるだとか朝比奈川で釣れたとかは噂程度で耳にしていたがあった。
 
 昨年(2003年)の秋、初めての鮭釣りが無釣果に終わり、今年もその野望に燃えて、長い延べ竿となる型落ちの安価な本流竿を買った。 まぁ、そのついでと言っちゃあなんだが、この新品の竿を振る練習ついでに、あわよくばサツキマスをという訳である。

 釣れる確率は極めて低いだろうが、どうせ竿を振るなら釣れないより釣れた方がイイに決まってる。にわかにかじった知識で、潮、天気、濁り、日照、時間、などなどの条件を考えてみると全ての条件が揃うタイミングは意外と少ない。 何はともあれ初心者なのだから足繁く通うのが良いだろうが、朝早く布団から出られずに寝過ごしてしまったことも幾度となくあった。
 それでもこのような短時間の釣行を重ねるうちに、ようやく釣果がありましたので報告致します。
 
 この日も平日の出勤前に竿を振っていました。いつも通り釣人は僕だけ、狙うポイントは流れの合流脇の弛みです。
 川端にチラつく長竿を見つけたのか、時には早朝散歩のオジさんが立ち寄って 「6月からだよ」 「監視員が来るよ」 「向こうでウナギが獲れるよ」などと声を掛けてくれます。 悪気は無いのでしょうが、僕の背後から薄笑いを浮かべて色々と忠告してくれるのです。
 「サツキだよ、サツキ」 「どこかで捕れたって話を知ってますか?」
と尋ねると、キョトンとした表情をしています。たぶんサツキマス自体を知らないのでしょう。眼の前でバツーンと一発釣って「これだよ!」と言って見せてやりたいのですが、そう上手くいく訳がありません。 半ニヤケのオジさんのことだから、サツキと聞いてきっと五月みどりを連想しているのでしょう。
 
 
 何度も何度も振込み流すの繰り返し、この川でサツキマスを釣るのは宝クジを当てるようなものかも知れない。 外から見れば、まるで無駄にも思えるようなこの時間。それでも早朝の河原に立ちのんびり過ごす時間は清々しく気持ち良く、子供のときのように空想を巡らすことのできる機会でもある。
 そんなどうせ釣れないサ的開き直り風雰囲気のなか、釣糸は根掛かりとはチト違う生命体の抵抗を捉えていた。
クン...クンクンッ!
 
 一気に胸が高鳴る。濁った水面下では魚がゴボゴボッと暴れている。ん? 僕のイメージではアタリと同時に強烈に突っ走るハズなのだが...頭でっかちなまでのイメージと今の現実に若干の差異を感じつつも、取り込みに全神経を集中した。緩い流れに導きつつも魚体を浮かせて水面に見えたのは、なんとオチョボ口。奴だ。 ウグイである。僕の新しい本流竿を最初にしならせた魚はこの尺ウグイであった。 竿はしなやかに曲がるも余力を残して奴を引きずり上げた。
 
 
 
 このシーズンは数えられる程にしか本流に行きませんでしたが、結果としてサツキマスが釣れることはありませんでした。 来年はどうするのか、今のところ特に予定も決意もありません。
 
そして・・・
男は帽子を目深にかぶりコートの襟を立て、ゆらぐタバコの煙に眼を細め、チャールズ・ブロンソン級の渋い表情で天を仰ぎつつ、流れに背を向けた。 I’ll Be Back 大井川  Good Luck!
 遠くでアホウドリが鳴いていた。
 
秋にはこの本流竿で本命の鮭を狙う・・・

  

 
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