じゃぼん
   

 

 この日、X沢下流域を順調に釣り上がっていた。この流域の遡行は概ね簡単だが、1・2ヶ所ゴルジュ内の深い淵があり、水量次第では通ラズとなっている。わざわざ着替えて泳ぐ気にもならないので右岸のクラック(岩裂)にハーケンを2本打ち、ザイルを使って淵の右岸壁をトラバース(横切る)する事にした。
 体重の軽い順に越えていき、最重量の吉田が
ザイルに体重をかけた時、 ピシッ と
1本のハーケンが抜けた!
 「あ゛っ!」 と吉田がカン高い声で叫んだ。
吉田はズルッと落ちたが、残りのもう1本の
ハーケンで止まり、水面スレスレで助かった。
 「惜しいなぁ〜」 と皆の声。
手と肘を擦ったが、頭を打たなくてよかった。
 帰路はこの淵をゴムボートで下った。
淵はゆったりとした流れで、ゴムボートにまたがってバランスを保ちつつ浅瀬まで流れていく方法だ。ここでまた吉田がやってくれた! ボートに股がった吉田がゆっくりと流れていく。岸壁にボートが接しかかったので、両手で岸壁を押した。これでバランスが崩れた!ボートが左右にゆらゆらと揺れた。
 じゃぼん 吉田がボートごと逆さまにひっくり返った! 
水飛沫をあげての大爆沈だ。
「はぷぷっ、はぷぷっ、」と吉田は平泳ぎとも犬掻きともつかない泳ぎ方で浅瀬にたどり着いた。
狂ったかの様な笑い声が薄暗いゴルジュいっぱいに響き渡った。
 以前、M沢での丸木橋からの爆沈では煙草を濡らしてしまいニコチン切れで途中撤退した吉田であるが、今回は煙草を防水ケースに入れていた為、爆沈後もニコチンパワーを切らす事なく遡行を続けることが出来た。
 
     


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