またまた、やってくれました!
 
ヒット&リリース王 参上!
                                    

 


 その日、私は吉田とシンヤと一緒にX沢中流域をいつもの様に釣り上がっていた。大岩を右上へ巻いて降りた所に、ちょうど良い笹濁りの淵が待ち構えていた。 早速、私とシンヤが竿を振った。私は向こう岸近くを、シンヤは奥の落ち込みの脇を狙った。 チキチキ、きた! すぐに私の竿が反応した。 ピヨヨ〜ン 驚くほど小さく綺麗なアマゴが顔を見せてくれた。
 苦笑いをしながらリリースをしていると、シンヤが鈍く重いアタリを捕えていた。竿はしなるが、なかなか獲物が上がって来ない。 笹濁りの水中、何かデカい物がグルグルともがき廻っている! 「おい、おい、これはナカナカだぞ!」この時になって、ようやくシンヤに緊張がはしる! 淵の流芯は流れが速く、そのまま下の淵に1m程落ち込んでいる。「下の淵に落とすなよ!」 「水面まで上げちまえ!」私と吉田がよってたかって大声ではやし立てる。

下流側の背後は先程巻いた大岩で、下流への走路は断たれていた。つまり、何としてもこの場所で獲物を取り込まなければならない状況である。
その時、黒い影が下流へと走った! シンヤのグンター0.4のケチ糸が悲鳴をあげた! 「ん゛〜っ」 シンヤが唸る! 私「下の淵に落ちたぞ!」 吉田「バラしたか?」 私「まだ大丈夫だ。」 シンヤ「ん゛〜っ」 シンヤの下半身はもうガチガチに固まっている。 私がタモを広げ岩の真下まで走る!膝上まで急流に浸かり、前傾姿勢でタモを出した。白泡の中、尺クラスのアマゴが上流に向かってアングリと大きな口を開けているのが見える。そして下流に向けてシンヤの腕と竿は伸び切っていた。 これでは流れに逆らって、上流に獲物を30cm位引っ張ってこないとタモには収まらない。
プスンッ!?・・・

音はしていないが、そんな感じだ。時が止まり、音が消えた、、、 タモに収まろうとしていたアマゴが白泡の中に消え去った。
バレたのだ。針は切れずに仕掛けに付いていた。 シンヤは竿を放り、ぶっ倒れ、大の字になった。 

ア〜ッハハハハ、ヒ〜ッヒヒヒヒ!
 周辺の魚が散ってしまう程の笑い声が渓に響き渡った。
驚き、緊張、興奮、歓喜、慌て、呆然、悲壮、脱力、、、一瞬の輝ける凝縮した時間であった。
 
 この後は順調に釣り上がって行き、ルンゼ内を登って高巻く手前でコンビニ袋に入ったゴミを見つけた。シンヤはこの袋の中のおむすびの袋の製造年月日を見て、 「畜生!最近、ここに入っている奴がいるなぁ」「こんなゴミ、捨ててきやがって!」と、それはまるで先程バラしてしまった怒りを、ゴミを捨てた釣人にぶつけているかの様であった。 確かに、即席ラーメンのカップ等の食いガラや、さらには空のガスボンベまで捨ててあった。しかし結局、「俺のザックは小さいから、」とゴミは私のザックに収まった。
 

  


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