2003 釣行記 

岩魚寿司へようこそ

 2003.4.29〜30. オオシオさん 川虫くん 浅川 みっちゃん


 『自分が釣った岩魚をプロに寿司を握ってもらいその場で食べる』
こんな贅沢を夢物語のように漠然と思い描いて久しくなる。 しかし昨年、オオシオさんと川虫くんの岩魚寿司釣行記を見て、現実のこととして私のこの欲望は燃え上がった。
 以前から釣った渓魚を刺身として食べてはいたが、本格的握り寿司となると店でしか食べたことがなかったのだ。もちろん昨年も自分で岩魚寿司を握っみたもののシャリで大失敗。禁漁期には自宅で何度か鯵をネタに練習していたのだ。
 そして迎えた今シーズン。私はお店が平日休みであるオオシオさんに早くからゴールデンウイークの予約を入れ、一緒に釣行&岩魚寿司の計画を立てていた。
 
 釣人のなかには「天然魚を生で食べると虫に当たる」と言う人もいるが、私の経験と身近で聞いた限りでは実際に食べて健康を害したという話は未だ聞いたことが無い。
聞いた話を鵜呑みにする訳ではないが、もし虫に当たることがあったとしても、自動車事故よりずっと低い確率であろうと独自の感覚で考えている。 
事故という危険性があるのに自動車に乗るのは圧倒的に便利であるからだ。ならば例え腹に虫がつくという可能性があっても岩魚寿司を食うのは圧倒的に美味いからだ・・・という自論もある。
よって聞いた知識より経験優先主義である私は天然岩魚寿司もその場で美味しく喰らう方針なのである。
 それに崩れそうな山道を走行し、ガレを渡り苦労して山奥まで来て、すでに危険度の高い行動をしてきているのに、この美味い岩魚寿司を些細な理由で食わない、というのは私からするとどうも腑に落ちないのである。
 例え私が自分の腹に寄生虫を飼ったとしても健康に害がない(自然宿主)ならばそれで良いとも考えているし、“虫下し”なんて方法もあるだろう。
 
 私の勝手な推測では、「天然魚を生食すると虫に当たる」と言う釣人は持ち帰って家で食べているのでは?とも思う。つまり調理までの時間と処理法が適切でないのでは・・・という訳だ。
 「民宿や観光地で食べる岩魚寿司は養殖物だから大丈夫」という話も聞いたこともあるが、これも可笑しな話に聞こえた。 養殖岩魚は配合飼料を食べているから、という理由らしいのだが多くの養殖場が沢から水を直接引き入れている現状から絶対に川虫などの活餌を食べていないとは言い切れない筈なのである。
 むしろ私の場合は養殖物を生食する際、生育に使用される病気予防薬や配合飼料、養殖環境に根拠なき不安を感じたほどである。
 
 ただしこんな事を言っても私は天然岩魚寿司を食べることを勧めている訳でもなんでもない。無論、研究してもいないし、統計をとっている訳でもない。もし気持ち悪くって嫌だというなら食べなければ良いだろう。
聞いた話に何か矛盾を感じ可笑しく思った・・・ただそれだけなのである。
 
 一泊二日釣行の初日、皆に先行してもらい私は午前中仕事のために単身後追い入渓。
ゴールデンウイーク中間の平日とあってか車停めには幸運にもオオシオさんの車両のみ。
私は一気に予定のテント場を目指したが沢は予想以上の増水で所々でギリギリの渡渉を強いられる。きっと朝の時点ではもっと水量が多かったであろう。 先行しているはずの釣友三人が下流で土左衛門になっていないだろうか心配になったが、砂地に新しい足跡を見つけて安心した。
 増水時には渡渉困難となる区間を山腹のヘツりで高巻いて行きしばらくすると、遡行に際してあるべきハズの場所に彼らの足跡が無い・・・「私が高巻いた区間内にテント場を設けているのでは?」と思いつつ、あと少し先の予定テント場まで際どい渡渉を続け歩いていった。 現在の釣りとしての条件は最高で、渡渉の度に走る魚影が嬉しくて遡行の励みとなる。
 予定テント場に着くとやはり人影はなく、対岸に可愛らしいバンビちゃんが黒い瞳でこちらを見つめているのみであった。 日暮れも近いのですぐに折り返し戻っていくと先行3人組は予想通りの場所にテントを張っていた。何はともあれ日暮れ間近にして無事に合流できて良かった。
 このテント場区間は増水後に一番乗りした者だけがよく釣れる場所である。
 「どう、寿司ネタは釣れた?」と生簀ビクを覗き込むと、、、いるいる。
 「おおっ、美味しいサイズだね〜 寿司食えるじゃない!」
 「いや、岩魚は1匹だけで足りないんだ」
ここは本来はアマゴ域なので岩魚は増水によって落ちてきた場合にのみ釣れるのである。
明日は雨の予報だし、ここは竿を出しておくしかない。ザックを降ろしてすぐに今、往復したばかりの流れに戻って竿を振った。 そこは岩魚には流れが強過ぎるし、緩い水勢の所は私が歩いたばかりであった。それでもトロ場からは1匹の岩魚が釣れた。
 テント場に戻るとすぐに暗くなりぼちぼち宴会。 喉はすでにカラカラに乾き、足元の清流で冷えたビールが気になって仕方ないが、オオシオさんが寿司を握ってくれるまでもう少しの我慢だ。
 オオシオさんは桶の裏底をまな板がわりに使っていたのだが、少し高くなった縁が邪魔らしい。しかし私のような素人目には実に手際よく鮮やかに身を削いでいるように見える。
私がやると随分と身が小さくなってしまうものだが、オオシオさんは小刀のようなナイフを使って無駄なくネタを切り分けている。 もちろん同時進行で飯盒で米を炊きシャリを作る。
 

左上の二列がアマゴ寿司 右下の三列が岩魚寿司
 
 それをオオシオさんが熟練の手つきで握ってくれる。
そして、 カンパーイ!
グググーーーーッとビールで喉を潤し待望の岩魚寿司をパクリとやる。
口の中では岩魚の身がまだ生きているかのようにシャリの波間でプリプリと踊っている。

・・・・・本当に美味いものを食うとき人は寡黙になる。
 全てが喉を通ってから一言。
 「うまいな」と各々が静かに声を発した・・・食の感動である。

 
 そこには街で食う岩魚寿司とは全く違う味わいがあった。もちろんアマゴ寿司も美味い!
自然のなかで腹を空かして食っているという事を割引いたとしても余りある美味さだ。
重ね重ね言っておこう...
『自分達で釣った天然岩魚をその場で職人に握ってもらった寿司』なのである。
価値感は人それぞれだろうが、私はこれを“究極の贅沢”だと体感した。
脳味噌で思ったのではない。“体感した”のである。そう魂の叫びなのだ。
私が表現として言葉にすると全てが軽くなってしまうが、そういうことなのである。
 あまりの寿司の美味さに持ってきたビール(スーバードライ)と清酒(志太泉)さえも、しばらくは飲むのを忘れるほどであった。
  

 
 今回は綿密に食料計画を立てていた訳ではなかったので、それぞれが好きな物を好きなだけ担いで来たので二泊できる程に酒も食料もある。
川虫くんのイカ飯、私のタコ焼、浅川のチキンナゲットも食べて、さらにはアマゴの塩焼きや頭・中骨のから揚げも美味しく食べた。
 オオシオさんが用意してきた野菜とアンチョビ・渓魚の刺身などをライスペーパーで包んで食べる生春巻も極上の逸品であった。 
 
 
渓流宴会はどこまでも続く・・・ 
 
 私を除く先行した3人は深夜に車停めに来て、ほとんど眠らないまま早朝から重荷を担いで激流を渡渉しながらここにたどり着いたので、腹が満たされさらに酔いが回ってくるとかなり眠そうである。 私も酔うと眠くなる方なので寝たほうが良いんだろうが、こうして焚火を囲んでマッタリと飲んでいる時間が心地よく、このまま寝てしまうのが惜しい気がしてならない。そうこうしているうちに何度か睡魔の波状攻撃を喰らい我々は撃沈、爆睡した。
 明け方に尿意を催したので外へと出ると意外にも小粒の雨がパラつくのみなので気を良くしたものの、この後は空が明るくなるに従って雨足が強くなりドシャ降りとなった。
 テントで横になりウトウトしながら二時間ほど待ってみたがドシャ降りは止む様子になく、たとえ雨が止んだとしてもこの漏斗状のこの渓は増水し続けることだろう。すでに今回の最大の目標は達成されているので早々に撤退を決め身支度をした。
昨日来るときでさえギリギリ渡渉だったのにこれ以上の増水は帰路を失いかねないのである。
 もちろんエスケープルートもあることはあるが、尾根を稜線まで登り詰めて移動する為、この雨でこの重荷ではあまりに辛くって、とても気が進まない。 私達は昨日の往路をたどり戻ったが、やはり渡渉に苦労させられた。 増水と濁りから渡渉点の読みが困難なので、支点を探しだしてザイル渡渉をして進んでいった。
 途中、これから釣るという物好きな単独ルアーマンに出会って話し、帰路の別ルートを教えてもらいこれを辿って車停めまで帰り、まだ昼前だが『民宿ふるさと』に立ち寄って、気持ち良く温泉に浸かり無事に帰宅した。
 
オオシオさんの同釣行記 川虫くんの同釣行記

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