2003 釣行記 

コンビ復活

 2003.5.18.  シンヤ 浅川 みっちゃん    


風は突然に
 土曜の半日仕事を終えての夕方。予定のない私は自宅でノンビリとしながらビールの栓を開けていた。 そのとき要注意人物からの着信メロディー(燃えよドラゴン)が鳴り携帯電話が震えたので、これにでると浅川からであった。 聞くと、家族で近所の公園に来ていると言うので、そのままビールを飲みながら歩いて行くとマイホームパパ化した浅川が酔いながらも子供とシーソーをして遊んでいた。どうやら肥満親子は一緒にカロリー消費に来ているようだ。
当然のことながら「明日は何する?」の言葉に始まり、すぐに釣行計画はまとまった。  そしてこの即席計画にシンヤも加わり、私達3人は深夜に家を出発して入渓点である車停めでわずかな睡眠をとった。

新緑の渓
 普段は泊まりで行く源流コースを今回は日帰りで行こうって魂胆なので寝坊は許されない。薄明るくなるなか眠い目を擦って起き、身支度をして歩きはじめた。 荒れた林道を歩きガレをトラバースして(横切って)行くが、この高度感満点のガレ場を前にシンヤの足がすくんだ。 一歩踏み出しては首を傾げては後ずさりして戻る、、、この繰り返し。まるでマイケルのムーンウォークをスロー再生で見ているようだ。 一旦、ビビッて足がすくむと体が壁面に張り付いてしまい、なんでもないガレ場でも個人的難易度がアップして危険度が増す。 結局、寛大なる釣師である浅川と私は笑いながらこのガレを引き返し、進路を別ルートにとった。
 長いアプローチ途中での朝の好渓相は釣師を誘惑する。
シンヤが野糞をしている待ち時間を惜しんで私と浅川は竿を振るが、私達の動向が余程気になるのか、こんな時に限ってシンヤは早糞でそそくさと戻ってくる。 歩き飽きたことだし、このまま竿を振っていたい衝動にかられるが、ここで時間を使ってしまえば目的水域に到達できないのである。このような遡行途中での好渓相は源流への障害ともなり得るものだ。 ここは鉄の意志で竿を仕舞い、好ポイントを見送り先を急いだが目標の釣場に到着した頃にはもう陽は高く昇っていた。 

 

 本日の釣場である沢は笹濁り色の流れで、見上げれば樹木の黄緑色の新緑が心に沁み入るほどに美しい。 私達は期待満々で竿を伸ばした。
 「今日は1人尺3本で合計9本だ」などと当初は楽観視していた浅川だったが、それに反し魚信はず〜っと渋々で、私が一匹の岩魚を釣ったのみであった。 それでもこのヤマトイワナを拝み、さらに源流に来た喜びを感じながら釣り歩いた。
 

 
最後の淵
 まだろくに竿を振っていないが、日帰り源流釣行なので帰る時間を考えてこの好淵を最後とし竿を出す順番を決めた。 まだ今季これといった釣果が無いシンヤが一番手、次に浅川、すでに一匹を釣っている私が最後に竿を出すことに決定。
 まずはシンヤが静かに淵へと歩み寄る。この男、よほど釣る自信があるのだろうか、もうニヤけ笑いを浮かべている。
竿を一杯に伸ばし大きく振って遠くへと投餌した・・・かと思ったが、すぐに渋い表情で戻ってきた。 見ると、餌は着水することなく竿先にクシャクシャと仕掛け諸共絡み付いているではないか。これが浮付いた心構えの釣師の末路である。 もちろんこの処理を待っていてやる程、私達は甘くはない。
 二番手の浅川が「どうする?」といった表情でこちらを振り返るが、当然この場合はGO! 必死になって慌てて絡んだ仕掛けの処理をするシンヤを尻目に好ポイントへの第一投を浅川が決めた。 ジックリと流し2投、3投とするがアタリ無し。
 これを見て私は2Bオモリに+4Bを付け加え合計6Bで対岸から最奥の滝脇へと2匹掛けのミミズ餌を投げ込んだ。 しかしこれも2、3投してアタリ無し。 シンヤの準備が出来たようなので、私は退きながらも淵底をオモリで引きずってくると...
ぐうぅーーーん きた!久々にこの感触!
 好感触のその主を浮かせるまでは早かったが、それにしても水面のきらめきが眩しくって仕方ない。私からは正確な位置を把握し難いが、浅川の角度からはよく見えているようで、「何だ!ここだホラホラ!」と叫んでいる。
魚影は確認し難いが、先調子の竿が半月近くにしなっても尚、水面近くをジワジワと上流へと泳いでいくのが分かる。下流に走られないよう徐々にテンションを加えつつ近付いていき、目を細め光の反射の隙間に魚影を捕捉。 長仕掛けなのでグーッと左右の腕を大きく開いて奴をタモに収めた。

 雌らしく頭こそ丸いがズッシリとした良い体格である。 魚体に白斑が無いのはもちろん朱点さえも無い、尻鰭と尾鰭の下端が赤くて腹の白い堂々としたヤマトイワナである。
以前、あまりに模様が無いので北陸の釣友の大ちゃんが「ウグイじゃないか?」と言ったのもなるほど頷けるヤマト魚体だ。
 しかしこれ以後は釣れることはなく、よってシンヤと浅川はボーズ。ここに古くからの“釣れないコンビ”が復活した。 だからと言って、気を使い遠慮してしまうようなバカなが隊ではない。残酷にもボーズ(無釣果)である浅川にカメラを渡し、パチリと記念写真を撮ってもらった。そういえば去年は逆の立場だったな。
 帰り際には沢を横切って疾走する小動物を見つけた。最初はネズミかと思ったが、その首部分が長くほっそりとした体型からしてオゴジョだろう。一度こちらを窺ったのみですぐに獣の気配のする新緑の森へと走り去ってしまった。

   

優しい雌の顔


アホ面
馴染みの友だからこそ残酷だ
 なんとなく帰りの足取りが重い釣れないコンビ(シンヤ・浅川)はそれぞれ体のどこかしらが痛いだのと言っている。
浅川は早く釣行の幕引きをしたいかのようにハイペースで歩き、シンヤは痩せたいけどバテたくもないようで、体脂肪燃焼系飲料を飲みつつも飴玉やチョコレートを頬張りながらヨロヨロと後方を歩いて戻ってきた。
お昼に竿を納めて帰路についたものの、ようやく車に戻った頃にはもう陽が傾きかけていた。
 昔、爆弾小僧と言われたプロレスラーのダイナマイトキッドがタイガーマスクに完敗しその後、再来日した際には驚くほどにその肉体をビルドアップして戻ってきた。 そう彼等“釣れないコンビ”もまた、さらにパワーアップしてまたこの源流へと戻ってくることだろう・・・なーんて偉そうな事も今回は私だけが言える特権なのである。ガハハ

 

 
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