2003 釣行記 

その先へ・・・

 2003.8.2〜3.  浅川 みっちゃん

 
アプローチ
 遅い梅雨明けを迎え、蝉の鳴き声も煩い程となり、いよいよ夏らしくなってきた。 南アルプスの麓は夏の行楽シーズンとあって賑やかである。 この日も週末釣行には明らかに出遅れの土曜昼過ぎ、川の流れに逆らって源流へと車を走らせていた。 近頃の気温上昇と適度な降雨を考えて、今回はダム湖からの遡上を狙った本流釣りも釣場候補に挙がっていたのだが、そこは源流バカの私達。車中で釣場選択を迷っていると自然と源流へと足が向いていった。
 相変わらずの長い運転、そして満員御礼の車停めからの長い歩き。 渋い表情で帰ってくる釣師達から最新情報を得るほどに期待が不安へと変わっていく。 終いには、戻ってくる釣師との擦れ違いざまに
 「これから釣りかね?」 と、聞かれ
 「まぁ、キャンプしながらビールですよ」
作り笑顔で力なく答えるようになっていた。

 
浅川狂う@
 汗ダクでテント場に到着し、源流マンとしてまず第一にしなければならない事。それはビールをググッとやる事だ。
ここで一気に冷えたビールを大量に流し込むと胃が痙攣し、心臓はドキドキとしてしまうので、最近の私はヒマラヤで登頂後の祝杯で死んでしまった日本人の話を思い起こし、一気飲みの量をややセーブすることにしている。
それでも毎度、毎度、最初の一杯は実に美味い。
 今回は輸入牛肉関税率UPというニュースを受けてのバーベQ宴会である。 まずはブルーシートを張り、薪を集めて燃やし炭を作る。ここで今回の新兵器登場!焚火に空気を送る道具“パワー送風機”である。 前回釣行で寸又さんが使っていたのを見て早速、浅川が買って持って来ていたのだ。
浅川がハンドルを回すと送風口からブンブンと風が出てきて、途端に火は勢い良く、ゴーッと音をたてて燃え上がる。
アハ、アハ、アハ、アハハハハ〜〜〜ッ!
 焚火をしてここまで喜び爆笑する奴は珍しい。
闇夜で炎が顔を照らし出し、ある種狂気の表情に映る。 まるで放火魔犯の原形を見ているようだ・・・。

 豚トロがこれまた美味い

イヒヒヒヒ〜♪


 
浅川狂うA
 夜中寒かったせいか飲み過ぎたせいか、どうもスッキリしない朝を迎えた。 本日の行程は増水しても怪我をしてもエスケープが効かず、ましてや偶然に人に出くわすこともないような源流域である。事故のないよう集中力を持続せねばなるまい。
 車までの帰路は半日がかりなので昼11時の納竿を決めて、大型魚影の濃いエリアを目指した。
 微妙なヘツリと際どい渡渉を経てやっと竿を伸ばす。まずは浅川がブドウ虫餌で、私は毛鉤で竿を振る。
 「今日は釣れそうだ」 私が流す毛鉤がイイ感じで舞い流れている...竿を振り始めてから20分も経たないうちに浅川は35cmの岩魚を2本も釣り上げていく。予測した釣り区間がドンピシャ的中したようだ。 ご機嫌で釣り進む浅川を横目で見ながらも、私はその程度の釣果には動じず尚も毛鉤を振り続ける。
 たが問題は次だった。 小さな緩い落ち込みポイントで浅川が大きく竿をしならせた! タモを持たないヌキヌキマンの浅川はこれを水際へと引きずり揚げたので、私が走って見に行くと一際デカい魚体がうねっていた。そのしゃくれた顎先から尾鰭の端までメジャーをあてがうと、、、40cmと数mm。
なんと、40cmオーバーの源流岩魚だ。
アハ、アハ、アハ、アハハハハ〜〜〜ッ! 狂う浅川。
 こんなのを見せつけられては、もう我慢ならん!
これ以降、私は毛鉤釣りを中断し自宅庭で採取した必殺の“虹色ドバみみず”を使っての餌釣りに専念することになった。
 しかし今になって思えば、このシーンが型(魚体の大きさ)に対する歓喜のピークでもあった。
 
 

 
 
浅川狂うB
 餌釣り仕掛けを作りあげて、先行している浅川に追いつくと
 「さっきから塩焼きサイズばっかりだよ」と、浅川がボヤく。
見ると、焼けば一晩を要するような大きさである。
 「ちゃんと測ってみろよ」
そう言って私がメジャーを当ててみると32cmであった。
先程から塩焼きサイズだと思って釣っていた岩魚は実はすべて尺物であったのだ・・・型感覚の狂い始めであった。
 大型になる程、警戒心から口先で確かめるようにして噛んでいるらしく、どうも針掛かりが浅い。クツクツとしたアタリと目印の移動を楽しみながらの大遅アワセで対応していった。
 なかなか好渓相の淵でまた浅川が竿をしならせた。 その感触から 「泣き尺程度だよ」と言い放ち、獲物を引き抜こうとしている。 しかし私の角度からはどう見ても大物に見えるので、慌てて浅川を制止し、タモを持って流れに入り魚体を捕獲した。 やはり。
 「なんだ大きいじゃないか!」 そう言って測ると39cm。
アハ、アハ、アハ、アハハハハ〜〜〜ッ!
 浅川の五感はもう完全に狂ってしまっているのだ。
 そしてこの先でも37cm、38cm・・・と狂ったように釣り続ける浅川。不思議と小物はほとんど釣れない。奴ら共食いをしているのだろうか?それとも単に大きい奴から最初に喰い付くからであろうか。 私は写真撮影をしたり岩魚を滝上や枝沢へと運び入れたりしながら、それぞれが楽しく遡行していった。
 予定納竿時刻の昼11時を待たずして目測で明らかに尺を超える岩魚を浅川は12本、私は5本ほど釣っていた。
 型を求め、数を求め、釣り続けるその先にいったい何があるのだろうか...

尺取虫

棒立ちで竿出し ▲MouseOn!
 
 

どうやって獲物を取り込むんだ!?バカなが野郎
 
 
明日はどっちだ
 やがて浅川は、
「釣れ過ぎてつまんない」 こう言い出した。
 燃えるような釣欲は消え失せ、魚の大きさや数など、もうどうでも良くなっていたのだ。 型や数。数字にガツガツと固執せず、ただ今この時間この状況を楽しみたい。 自然とそう感じた。頭で考えたのではなく、体感しおのずと魂から湧き上がってくる感覚なのである。
 以前から「源流で40cmを釣ったら引退」と言っていた浅川だが、これで引退する気はまるでないようである。 それでは今後、この男はどのような釣りをするのだろうか。
 苦労の末にやっと釣り上げた一匹の喜びも素晴らしいものであるし、旅情的釣行もまた趣があって良いだろう。また自分の白地図を塗り潰すようにして難所攻略や釣場探索をしていくのも楽しい。 はたまたフィールドや釣法を変えてダム湖やバックウォーターへ下りさらなる大物を狙うのか、それとも稜線へと上がり沢や山登りへと傾倒していくのだろうか。 また私のように源流で移植放流やカメラ遊びをしながらの定形なき釣りをするのだろうか。選択肢は無限だ。
 いずれにしろ今回の釣行が彼に大きな影響を与えたのは確かである。これからは数や型の“数字”を盲信し明確な目標に向かって突き進むような釣行ではなくなるだろう。
 この一人の釣師の今後に注目だ。
 
 釣れないコンビ(シンヤ・浅川)【参照】の一人はこうして劇的リベンジを果たした。
残るはもう一人。こちらからも目が離せない。
 

  

 
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