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THANKS:Atnet Japan!
 
〜最終回〜

 
2002年8月14・15日   寸又渓輔・シンヤ・浅川・私  
 
 
南アルプス南部では、もう1ヶ月以上ほとんど雨が降っておらず渇水気味。
それでも、このお盆休みともなれば、何処の渓流釣場も人で一杯になるであろう。
 「それでもいいんだ」
 「渓流へ飲みに行くんだ」

と、近所の物好きな釣師4人組はお昼から車を走らせた。入渓地点の車止めまで来ると、すでに車がズラリ5台。やはりとは思いつつも、ガッカリと落胆してしまう。
 「まったく、5台目の釣人はいったい何を考えて入渓してるんだろ」
と、ボヤきつつも6台目の私達は入渓していった。 渇水なだけに徒渉は楽チン。 楽ついでにアプローチの歩きも短かけりゃあ良いのに、当然そうはイカの金玉。
ここ毎週のように歩いている長いアプローチはやはり今日も長いままだった。
 いつもは大きいザックの私が随分と荷物を持たされてしまうのだが、今回は寸又渓輔さん(以下、渓輔)が剛力として(?)たくさんの荷物を担いでくれたので、私は楽々なのである。 テント場までのアプローチで、すでに帰る2組4人と擦れ違う。
 「渇水だし、お盆休みだし、飲みに来たようなもんですよ〜」
と、ニコやかに且つ謙虚に話しつつも、腹の奥底では誰しも釣る気満々マンなのである。特に今回、リベンジ釣行のアノ男は口先では「謙虚に」と言いながらも燃えに燃えていた。当然、釣った場所や先行者情報を聞き出すことも抜かりない。 どうやら、あと3組の釣人が上流にいるようだ・・・
 
    
 
 夕方にはテント場に到着して、ツェルトとブルーシートを張り、薪を集めた。
この短い夕方の間にシンヤが20cm程の岩魚を1尾釣り上げ、これを骨酒用に焼き枯らす。 昼から水物を飲むのを我慢していた私が脱水症状気味で迎える最初の一杯のビール! モ〜堪らん!この南アルプスの麓は下界に比べ、ずっと涼しく快適この上ない。同じ中学校の学区の4人なので、昔話や地元の話題やらバカ話に花が咲き、渓輔が作ってくれた枝豆や春巻も美味い!渓から見上げる夜空は広くはないが、霧吹いたような無数の星が光り輝き、流れ星も見ることが出来た。
 岩魚が炙られ、骨酒を飲む頃には皆ホロホロと酔いがまわり、なんともイイ気分となっていた。骨酒の一番出汁を味わって渓輔がカクン。 二番出汁を飲んでシンヤがカクン。三番出汁の骨酒で浅川と私がカクン、カクンと深い眠りに墜ちたようだ。
 
    
 
 朝はシッカリと御飯と素麺を食って出動。
支尾根を登り、稜線からガレ場を下降して沢へと向かう。
このルート3度目の浅川はフリーでこのガレを降り、私達はザイルを垂らしての肩絡みで下降していった。 私のリードがいい加減な為か、次のビレイポイント(確保地点)までザイルが若干届かない。
 シンヤ 「おい!ザイルはここまでかよ!」
  私  「チョット足りなかったな(笑)」 「あとはここまでフリーだ」
 シンヤ 「なんだ!ザイルの意味無いじゃないかぁ〜?」
・・・まぁ、大体がいい加減なものである。
こうして4〜5ピッチ程をザイルにぶる下がって降り、沢床にたどり着いた。
ここから前回に爆釣したウッシッシ淵までは渋い釣果。
私が塩焼きサイズ1匹をバラし、渓輔がこれと同サイズの岩魚を1匹釣ったのみ。 渇水で連休とあって、やはり釣りは厳しいのだろうか・・・ そんな渋い釣果のなか、新鮮で堂々とした人間の野糞を発見してしまい、またまたガックリ。 浅川は「シンヤが釣るまでは竿を出さない」と言ってここまで歩くのみであった。
 
期待たっぷりで挑むウッシッシ淵。
また私達の期待に応えてくれるだろうか? 
期待と不安が入り混じるなか、左からシンヤ、右から渓輔がアプローチ。
 まずはシンヤが一番手で竿を振るが、張り出した側壁にいきなり竿先を擦ってしまい、ガリガリッと音をたてた。 見ているこちらがハラハラしてしまうが、もう一度振り込みなおして好ポイントへと投餌した。続いて渓輔が軽快なフットワークで右側の岩上に乗り、身を屈めて好ポイントに投餌した。
 後ろで私と浅川が待機することしばし・・・渓輔の竿が大きくしなった!
 
一目で良型を感じさせる力強い引きである。
と、その時、魚は水面上に勢い良く跳ね上がった! ライズだ!
うひょーーーーっ! まるで漫画“釣りキチ三平”のワンシーンのようだ。
バラしたか? いや、バラしてはいない。 元気な岩魚とのやりとりが続くが、もう見ている私がいてもたってもいられずにタモを手にバシャバシャと淵へと入って行き、この獲物をすくい上げてしまった。 見事な源流尺ヤマトである。
  
 渓輔とタモの獲物を覗き込んでいると、続いてすぐにシンヤの竿も大きくしなった。
慌ててタモの渓輔の岩魚を陸へと放り出し、淵へと戻る。
 グッグッ、グーーーーーッ!
何度も潜られては引き上げ、走られては引き戻すの繰り返し。この攻防が堪らない!
今度はタモを浅川に託して自分はカメラを構えたが、私も興奮していたせいか、後で見るとピンボケ画像ばかりであった。 淵をグルグルとかき回すかのような長い攻防の末、ようやくタモに収まった獲物をシンヤと浅川が頭を擦り合わせるようにして覗き込む。
 ウッハッハハハ!  でけぇ! でけぇ! でけぇ!
皆、岸辺に集まり獲物を囲む。  魚体に沿ってメジャーを並べ、測ると・・・ 34cm。
シンヤは感極まった表情から満面の笑みで、笑いが止まらない。感無量で頬擦りでもしそうな勢いでしきりに岩魚をナデナデするが、魚体のヌメリが取れ岩魚はいかにも迷惑そうだ。 そこには感動を超えて歓喜が満ち溢れていた。 この瞬間、この時間、この釣人はこの世で一番の幸せ者に違いない・・・といった顔をしている。
 
 岸辺に石で囲んだ即席の生簀を作り獲物を入れ、眺め、撮影し、そしてまたニヤけた。
 


 

 
 シンヤがスターボーズの汚名を返上すると同時に、泥沼のダークサイド(暗黒面)から抜け出た瞬間でもあった。
自然での釣りを楽しむことを忘れ、釣果ばかりを追い求めるダークサイド。
そこから抜け出させてくれたもの・・・それは皮肉にもこの“釣果”であった。
 自然や釣りに対して、考えれば考えれるほど矛盾が生まれてはグルグルと渦巻く。
考えるでない、感じるのだ。 魂の叫びを聞くがよい。 フォースとともにあれ・・・ ???
 


輝く満面笑顔!

 
 2匹の尺岩魚との攻防であれだけグルグルにかき回された淵であるが、今度は3番手として私が竿を振った。先程の渓輔の投餌位置より少し先で低くしゃがみ込み、竿をいっぱいに伸ばして、淵奥の滝にブチ当てるようにしてブドウ虫を投餌する。
 緩い流れにまで自然に流してジッと待った。
 クン、クン・・・グワ〜〜〜ン
 「きた! きた! またきたーーーっ!」
仕掛けの緊張を保ったまま、足場の岩から滑り落ちるようにして降り、下流の流れに立ち込んだ。そして渓輔のときと同様に魚に水面高くライズされて、もうハラハラドキドキだ。
 
なんとか時間をかけて無事に獲物を取り込んだ。
そしてコイツもまた、35cmの尺物だ。
 なんということだ・・・
今までは夢物語として、
「尺がライズした」とか
「尺がツガイで泳いでる」とか
「尺が入れ喰いだ」などとふざけて言っていたが、
それらが一遍に現実となっているではないか。
 
 シンヤが釣ったので、ここでようやく公約どおりに本日釣り解禁となった浅川が4番バッターで打席に立った。少し時間はかかったが、またもやヒット。 浅川が“小さいな”と言うその岩魚。 釣り上げてみれば、それでも泣き尺サイズであった。 この後も、9寸〜泣き尺と良型岩魚がこの淵から姿を見せてくれた。そう、ここで10日程前に尺物3本を釣ったばかりなのに、またこれである。 遡上止めで溜まる淵となっているのだろうか?しかしこれだけの数で良型岩魚がこの淵ばかりに集中しているのは、なんとも不思議なものだ。

 結局、即席生簀には6本もの岩魚が入った。
これを友バッグに入れて、遡上不可能と思われる滝上の流域へと渓輔に運んでもらい、岩魚の引越しをした。
 
即席生簀に尺岩魚が揃う
滝を越えてのお引越し
また楽しませてくれよ♪
放されて身を寄せ合う
 
 滝上の流域では9寸程で黄色を帯びた綺麗な魚体の岩魚がよく釣れる。途中、思い出してはクックック♪とまだニヤけているシンヤが渓輔と話す。
 シンヤ 「今日は全員で尺が6本も釣れているんだぜ」
  渓輔 「尺6ッスかあ〜・・・」
 シンヤ&渓輔 「尺8!」
 そろそろ集中力が途切れてきた私達であったが、渓輔だけは快調に釣り上がって行く。 この男、何かを考えている・・・そう、あと2本の尺物を釣って、尺を8本揃えようとしているのだ。きっと『渓に棲む』でのこの釣行記を「みんなで尺八」なーんてタイトルにしようとでも思っているのだろう。
 

  

 
 帰りにはテント場で簡単に昼飯を食い、昨日歩いたルートをホクホク顔で戻って来た。今回はお盆という事もあり、獲物はオール・リリースして殺生をせずに終わった。ん?昨夜の骨酒は・・・?
 「あれはご先祖様へのお供物だ」 「清めの酒だな」
 「送り火で焼いたからOK」

などと、釣師特有の身勝手な解釈による理論をまくし立てたのであった。
 

 
 車での途中、『民宿ふるさと』に寄り、スベスベの田代温泉の湯に気持ち良く浸かった後、最新の大物魚拓を見せてもらった。 先程からここの店頭で売っている冷えたビールがどうも気になって仕方なかったが、運転手をしてくれている渓輔の「藤枝まで我慢、我慢」の言葉が我々のグラつく弱い意志を支えてくれた。
 もちろん藤枝まで帰って来て、カンパーイ! 祝杯をあげた。
釣りもビールも、グググググーーーーーッ! 嗚呼、この瞬間が堪らない。
 

 

 
STAR BORS
 
 完ケツ
 
 

 
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