STAR
BORS

V

THANKS:Atnet Japan!
 
〜私の復讐〜

 
2002年8月3〜4日   浅川・私  
 
 
前釣行から一週間、あのバラした(逃がした)岩魚の姿とその感触が毎日、幾度となく甦ってきては私を苦しめていた。 決着をつけねばなるまい。 この呪縛から解き放たれるためにも・・・
 お盆休みを控えた最後の休日である。今しかない。いくぞ! 絶対いくぞ! 独りでも、日帰りでも行くぞ! 楽しむというよりは先週の悔しさを発端にした執念の釣行の始まりである。
なんとしてでも、バラす事なく型(大物)を釣り上げたい。 私でなくてもいい、浅川が釣ってもいいのだ。とにかく40cm級の源流岩魚をこの手に取って見たかった。 確実にいるハズである・・・必ず・・・ 何とか休みの都合をつけ、今週も行けると言う浅川とともに前日アプローチでまたまたやって来た。日頃から私を束縛している仕事・家庭・街の付き合いやら、色々のなんやかんやから脱出してまた来たのだ。 う〜ん、なんという開放感!
  
それにしても相変わらずの暑さ、 「ビール! ビール! ビール!」 と汗ダクで唱えつつ歩く歩く歩く。口渇感からか瞳孔は開き、足元はおぼつかない。 我々、ビール教(狂)信者はビールの為なら、もう犯罪でもなんでもやってしまいそうだ。 脱水症状となりながらも明るいうちに出来るだけ歩き、なるべく上流にツェルトを設営した。
早速、クーラービクから冷えた缶ビールを取り出し、体へと流し込む。
  プシュッ、 グビビビビーーーッ!
腹で胃がビックリして跳ね上がっているようだ。この瞬間が堪らない。
 
 わずかな時間の夕まづめに浅川が竿を振ったが、やはり釣れず。 しかしそこは焚火奉行の浅川。 焼くべき獲物はなくても焚火だけは豪勢に燃やし、地球の温暖化に一役買っていた。
 今頃、街は熱帯夜だろうが、ここは涼しく気持ち良い。
しかし今夜はツェルト内に蚊がいたらしく寝ている間に浅川は随分と献血したようであった。
 朝早く、まだ薄暗いうちに眼が覚めてしまい、高ぶる気持ちを静めるかのようにユックリと野糞をかましながら白みゆく空を仰ぐ。 尻を拭いていると浅川がモソモソとツェルトから出てきたので、洗わない手ですぐさま水を沸かしコーヒーを飲みながら出発準備をした。
 朝一番の山歩きも、昨日の酷暑のなかの長いアプローチも、決して楽なものじゃないが、あの一瞬のきらめく歓喜を味わう為なら、まんざら苦しいだけでもないように思える。
 前回、釣場までの道のりは非常に苦労したが、帰路に杣道を見つけたことにより、今度は楽々と釣場へと到着できた。
 先週の大バラシからすっかり悪魔に心を奪われてしまったダークな私。 その燃える釣魂は、朝の渓流のせせらぎや小鳥のさえずり、爽やかな風と緑などに対し無関心にさせていた。
 浅川は先週に続き、ブドウ虫を餌にして33cm・35cm・・とサイズを伸ばしつつ釣り上げ、笑いが止まらない。一方、必勝態勢で得意のミミズ餌で勝負の私は塩焼きサイズの型が揃ってよく釣れる。だが私は職漁師ではない。 商品価値が無いような巨大な源流ヤマトイワナを釣りたいのであるが、なぜか私のミミズ餌の方には尺物が掛からないのである。 浅川と私、釣技も仕掛けもどっこいどっこいで同じようなもんだ。 投餌位置へのアプローチなどは私の方が慎重なくらいなのに・・・ああ、それなのに何故? 尺物ウハウハの浅川が私を不憫に思ったのか、イヤミなのか 
 「ブドウ虫やるぞ!一匹千円で...(笑)」などと冗談を言っている。
 

後ろから

前から
 
比較的大きな淵で私が左から、浅川が右からほぼ同時に投餌して間もなく、同時にアタリ。
喜んで合わせると、これまた同時に二人でバラしてしまう。 WアタリでWバラしである。なんとも情けないが、改めてこの魚影の濃さが嬉しかった。先週の入渓以来、どうも誰もここには入っていないようである。
 満を持しての好淵。
私の腕が悪いのか、仕掛けが悪いのか、やはり餌の違いか?
それを確かめるべく、私は浅川の言葉に甘えてブドウ虫をもらい針に付けた。 一投目で一番良い場所へ餌を振り込むとすぐに掛かった。この淵も両岸が狭く切立っているので竿を操作し難い。それに先程、タモを落として無くしたままなので、わずかに平らな波打ち際まで獲物を引き上げなくてはならない。竿先で岸壁をガリガリと擦りながら、素手で追い立てるようにして取り込んだ。  「尺か? ん〜、際どいか?」 浅川にメジャーで計測してもらって、義理義理の公認ギリ尺だ。ホントは微妙なトコだが、私に尺が釣れないと帰れそうにないので、浅川が仕方なく尺にしてくれたのだろう。
 

ウッシッシ淵

なんてったってウッシッシ♪
 
 続いて今度は浅川がまだ居そうな同じポイントへと投餌した。 浅川の立ち位置からは魚がよく見えるらしく 「いるいる、きたゾ!」とチラチラと私の方を見返しながら囁いている。しかし、そんな浅川の余裕シャクシャクもここまでで、掛かった奴は意外にも大きく力強い引きで応えてきた!
 ぐう〜ん 強く重い引きの主はなかなか浮上してこない。
何度も底へと引き込まれながらも、奴は徐々に浅く近付いてきた。
 うわっ、デカい!
タモが無いので、浅川が竿の弾力を活かして誘導し、私がドジョウすくいの様に追い回して手掴みで狭い浅瀬へとすくい上げた。
うおぉぉぉぉーーーーっ! メジャーを出せ!
凸凹した石の上での計測だったが、38cm。 浅川は笑いが止まらない。
 
 十分に獲物を眺め写真撮影を楽しんだ後、三匹目のドジョウを狙って、私がまたブドウ虫餌で同じポイントに竿を出した・・・
 「えっ? うそ、ウソ、嘘!」
まーた掛かった! しかもまた重く強い手応えだ。 そして、先程と同様にして二人で取り込んだ。
 「さっきのよりデカいんじゃないか?」 「太いぞ〜」
と、測ると37cm。 やっぱり餌の差だったのだろうか。 とにかく二人でもう笑いが止まらなかった。  岩陰からよく見れば、この淵にはまだ良型の岩魚が泳いでいるではないか。しかし私達はもう充分であった。 何も釣りきってしまう必要もないし、すでに楽しむだけ楽しんだのだ。時間はまだ10時前だが、もう下山して祝杯で一杯飲りたい気分なのだ。 私達はここで竿を仕舞って、流れに戻すべき魚は戻し、久々のウッシッシ気分でこの源流を後にした。
 

この笑顔だ!

ウットリです
 
 40cmには足らなかったが、どうせメートル法も尺貫法も人間が作った物差しである。私には、もうそんな事はどうでも良くなっていた。
この源流の美しい秘渓である、きっと何処かに40cm超の岩魚は息を潜めていることだろう。 釣師である私としては、意図的に40cmを超える岩魚を釣ってしまった瞬間から、自分のなかのこの秘渓が秘渓でなくなってしまうような気がした。 秘渓か、釣場か?・・・もう少しの間、この源流を自分のなかで秘渓のままにしておきたかったのだ。
 
 
 
ほとばしる岩清水。樹間からの木漏れ日。再び源流の美しさに気付いた瞬間だった。
 
 
帰りには2組の釣人と会ったが、私達はホクホク顔のくせに
 「いやぁ、足跡だらけで小物ばかりでしたよ」
とホラを吹き、心の奥底にはまだダークな片鱗を残したままで下山したのであった。
 

流れへ・・・

ありがとう
また楽しませてくれよ♪


 
 
こうして同渓3週連続釣行はハッピーエンドな
結末に終わったかと思われた...が、しかし
まだボーズのまま暗黒面(ダークサイド)に
心を染めていた男がいた。
Mr.STAR BORS 彼である。

 
釣れた者が釣れなかった者にどんな慰めの
言葉を掛けようとも、それによって癒される事
などないのであろう。
 
そう、また渓流に来るしかないのだ。
 
 
今後、この男の行方はいかに...
そして巨大源流ヤマトイワナは...
 

 
STAR BORS T U V W
 

 
HOME  MENU