EPISODEU
 

  
  
 
 

あらすじ
 『大物が入れ喰いで釣れる楽園沢はないだろうか?』そんなパラダイス探しをして久しくなる。パラダイスがなければ、作ってしまえ・・・元々は実に強欲な動機でプロジェクトKは始まった。 十数年先、さらには次世代を想った私利私欲的移植放流を今も続けている。
 
 昨年までは探釣活動がほとんどで、同一沢内でわずかなヤマトイワナを近距離移動するのみであった。そして今年、窓際釣師達は純粋種間での個体の引越し、そして異なる沢への移植放流を実行した。これが純粋なヤマトイワナを残す目的で正しい行為か否かは、結果としてまだ定かではない。
しかし現在、ここ数年のヤマトイワナ激減により事態は急を要することは確かなのである・・・

  
  
探釣
2002年5月 晴れ   △沢探釣
 △沢上流域はヤマトイワナの棲息沢であるが、アプローチし易い沢なので普段から入渓者が多く、私は久しぶりの入渓となる。 山道沿いの抜群渓相を横目でチラチラと眺めつつ、『ゴールデンウイーク最終日だけに連日入渓済みなんだろう』と、竿を出したい気持ちをグッと堪えて、山道から最も離れた水域へと足を運んだ。 釣場は傾斜があり、竿を持っての遡行は少々面倒である。その上、枝が被ったポイント多くて振込み難く、魚は釣りきられ難そうに見える。 ポイントの多くは散在する流れの強い壺淵で、軽いオモリではすぐに流れ落ちていってしまう。 オモリを連打して重くし、ひとつひとつの壺淵を探っていった。
 釣れたヤマトイワナは(写真)は腹が黄色く、朱点は濃く大きめで、体側の側線上部には朱点より小さなサイズの青みがかった白斑があり、背中にはこの白斑はほとんど無い。 20cm前後のサイズがよく釣れ、骨酒用の1匹を除きリリースした。 不思議なもので、このヤマトイワナの白斑は時間が経つと、どんどんと目立たなくなっていく。帰宅して冷蔵ビクから出した時には、この白斑は肉眼では認識できなくなっていた。 この岩魚がニッコウイワナとの混血かどうかは私には判別できないが、書籍によるとこのタイプのヤマトイワナをこの水系特有のヤマトとしているものもある。 しかし現在はまだ、全く白斑の無いヤマトイワナが存在しているので、本日のこのタイプのヤマトイワナを移植放流の対象とするつもりはない。

 
同一沢内での移植放流
2002年6月 曇り 水温10度  □沢移植放流
 ここのヤマトイワナは黄色が強く、着色斑は薄めでややスリムな体形。
カエシのない釣針にて釣り、なるべく濡れたタモとグローブで魚体を扱い、沢づたいは友鮎バッグと生簀ビクにて運搬した。山道の移動ではビニール袋に魚と沢水を詰めて固形酸素発生剤を投入し、ザックに入れ担いだ。 途中、冷却パックにて水温上昇を防止しながらも山道を早足で運搬した。久しぶりのシャワークライムに緊張しつつも滝を登り、私も岩魚もヘロヘロになりながらも同沢の滝による分断水域内に22〜26cmのヤマトイワナ4尾を放す。(以前からこの分断水域内では釣れた事がない)
 
≪プーさんのイタズラ!?・・・まだ暗い早朝の霧中にてビビる

  


 
同一沢での上流への引越し(釣りのついでに)
 
通常の釣りのついでにヤマトイワナをより上流へと運んだ。(放した水域にもヤマトイワナは棲息)つまり普段のようにその場にリリースするのではなく、より上流に運んでリリースしただけの事である。
主目的は@近親交配を避け多様性豊かに子孫繁栄 A釣人・他種魚放流者から遠ざける B岩魚運搬技術の習得 である。
但し、この行為には『下流に流された負け組の岩魚を上流へと運ぶのは自然淘汰に反するのでは?』とか、『下流に落ちるような泳力に乏しい岩魚(の遺伝子)までも上に運ぶのか?』 『混血種生息域を広げる恐れは?』等の御意見もあるだろう。 皆さんの御意見・アドバイスなどお聞かせ頂けたら幸いです。
 
2002年7月    〇沢探釣&引越し  上流へ3尾移動。
 純粋な無白斑のヤマトイワナのみが棲む沢に浅川と入渓。
左):この沢のヤマトイワナは無白斑で着色斑は薄く、白と青色が印象的な体色でやや太め。
中):ブチ模様の背中にも白斑は一切無い。大型になるにつれパーマークや朱点は薄れる。
右):友鮎バッグにて上流へ3尾運搬。

    


 
2002年8月  〇沢釣り&滝上引越し  上流へ4尾移動。
 「そんな事には興味はない」と言いつつも浅川が手伝ってくれた。
 
2002年8月  〇沢釣り&滝上引越し  滝上上流へ6尾移動。
 寸又渓輔・シンヤ・浅川・私
 みんなで釣ったヤマトイワナを寸又渓輔に滝上へと運んでもらった。>参照

フック&アブミで越える

 
同水系の異なる沢への移植放流
2002年9月    □沢→■沢 移植放流   晴れ
 翌朝の町内会の草取りをカミさんに押し付け、睡魔に襲われつつも曲がりくねった山道を車で行く。  昔からヤマトイワナの渓であった。そこが乱獲とニッコウイワナの放流により、昔ながらの純粋なヤマトが絶滅の危機に瀕している。 釣りの延長として踏み込んでいるこのヤマトイワナの移植放流もまた自己満足的な道楽に他ならないのだ。   ☆☆☆今回は以前から小さなヤマトイワナがよく釣れた水域である。 だがここも近年、ニッコウイワナとの混血ヤマトが混生してきている。 それでもここで純粋ヤマトを捕獲しようと決めたのには理由がある。 ひとつはこの釣場は非常にアプローチし易く、沢づたいにも移動し易い事。もうひとつはニッコウイワナの血が少しでも混じったヤマトの魚体には白斑が出現する、つまり白斑が全くない岩魚については純粋ヤマトイワナと確信が持てるからである。
 
 この日は渇水気味で釣れるか自信がなかったが、カエシのない釣針を付けて竿を振った。 意外にも魚影は濃く、昨年に比べて純粋なヤマトイワナが釣れる確率も高い。 昨年はここで泣き尺サイズの混血ヤマトが釣れてしまい愕然としたものだが、逆に今日は大型のものほど純粋ヤマトなのである。 魚体が大きければそれだけ運搬は大変であるが、見れば見るほどに愛着が湧き、コイツの逞しい遺伝子を新天地へと運びたくなるのである。 釣った12尾のうち純粋ヤマトは8尾、さらに25〜35cmの5尾を選んで運んだ。 重い友バッグと生簀ビクを持っての沢歩きでは、持ち歩き疲れては岩魚を水流に入れて休憩し、そしてまた運ぶ。この移動しては休むを繰り返すほどに、ヤマト達との一体感が勝手に私の方に生まれてくる。「たぶん私の片想いなんだろうなぁ〜」 放流予定の沢に入り、餌を捕食し易くて産卵床にもなりそうな放流地点を探す頃には、私はもう彼等との別れを惜しむようになっていた。 釣人や他種放流者から遠ざけけたい為に源流域の竿を振り難い場所にまで来てしまった。 渓相と流れはやや貧相だが、泥気のない砂利もあるし餌もある。 この放流地点の景色を自分の目に焼き付けるようにして眺めた後、元気なヤマトを放した。 数年後、ここがヤマトイワナの楽園となっていることを願って・・・
左):片側の上唇が無いヤマトイワナ。釣糸により取れてしまったのか先天性奇形なのか?
中):この沢のヤマトイワナは黒と黄色が特徴的な体色。 沢や水域によってかなり体色が違う。
右):意外にも大物。卵や精子の量も多いだろう。そして逞しい遺伝子を持っていそうだ。

    


 
2002年9月  □沢→◆沢 移植放流   曇り一時小雨  気温19℃ 水温12.5℃
 カエシの無い針での釣りにようやく慣れてきた。釣糸の緊張を保ったまま取り込む練習になるようだ。だが目の前でいちゃつくツガイの岩魚には総スカンを喰らう。 6尾釣れたうち、3尾は白斑の無いヤマトイワナ。他3尾の魚体には薄く小さな白斑が混じる為、ビクへ。敬老の日のお土産とした。 21〜33cmのヤマトイワナ3尾を移植放流。
≪産卵床にもなりそうな低く枝が覆う落込みに放した。最大の敵は釣人か?
左):どうも尺物が溜まる場所は決まっているようだ。
中):左から、ビニール袋・固形酸素・酸素缶・冷却袋・生簀ビク。
右):運搬直前。 これをザックに入れて担ぎ運んだ。

    


 
 ♂ヤマト×♀ニッコウ ♂ニッコウ×♀ヤマト (F1)
『この人工交配でいずれの場合においても100%の確率で白斑を持った岩魚が誕生する』という結果報告がある。【ただし孫世代(F2)、つまり隔世遺伝に関しては不明】
これが正しければ、
“白斑が無い岩魚について、その親はニッコウイワナではない”という事になる。
 
 

<無白斑のヤマトイワナ>
白斑が全く無く、着色斑すらも薄く、やや細身
このタイプのヤマトイワナのみを移植放流

 
 

 

<白斑が目立たないヤマトイワナ>
体側の側線より上に薄く小さな白斑が混じるが、背中には白斑なし。
これをこの水系のヤマトイワナとする文献もあるようだが、私には
この岩魚を純粋なヤマトイワナだと言い切る自信はない。

 
 

<白斑が目立つイワナ>
体全体に白斑がある
元々はヤマトイワナのみの沢であったが...

  
  
 
地球上の超生物である人間によって変えられる自然。
昔も今も、この人工の自然は私達の身近にある。
むしろ現代では手付かずの自然を見つける事は困難な程だ。
 
天然ヤマトイワナの保存にどれだけの意味があろうか。
“フロジェクトK”
これはヤマトイワナへの愛着からくる自己満足なのかも知れない。
 
 
皆様の御意見・御感想・アドバイス等をお待ちしています。
 
 

 
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