渓に棲むカニ

 2002年3月31日  私  

 
 日曜の朝10時から用事がある。そんな日でも渓流に行きたかった。 渓流釣りを始めたばかりの頃、吉田によく連れて行ってもらったY沢支流。私は未踏であるその本流源流部の小渓に行ってみたかったのだ。 「どんな渓相なのか?」 「どんな魚に遭えるだろうか?」 大きな獲物はあまり期待できない釣場ではあるが、昔はここのアマゴの美しさに感激したものであった。
 夜明け直前に車で上流へと向かっていると、100m程の後方から追ってくる車のライトががあった。 「まさかぁ〜」と思ったが、こんな時間にこんな山道をずっとである。 車停めに到着しバックミラーを見ていると、後ろの車は背後に停車したままこちらを窺っているようだ。「やっぱり釣人だ」意地悪な私は目を閉じて仮眠するふりを決め込むが、なぜか笑いが込み上げてきてしまう。 笑いを堪えつつ狸寝入りしているとトントンと案の定、窓をノックする音。
 
 笑顔で目を開き、この釣人とフレンドリーな会話と情報交換をして、ほんの少し先に到着した私がここから入渓させてもらう事となった。私の方は朝のチョット釣りだけなので何か悪い気がする。 大物は期待薄なので竿先がグニャグニャでコシのない5.3m竿に0.25糸を付けて振り込みつつ遡行していくが、所々で薮沢となっている小渓ではなかなか繊細で難しい動作である。 しかしチビアマゴであっても針に掛かると竿の反応は良く、ブルブルと大袈裟に竿がしなり震えてくれるのが堪らなく楽しい。釣れたチビアマゴはすでに盛期と変わらない魚体を見せてくれた。この沢特有の鮮烈な濃い朱点も健在で嬉しい。
 「なぜこの沢のアマゴの朱点は濃い赤色をしているのだろう?」
 文献によると、蟹や海老や川虫などの殻に入っているカロチノイドという色素がアマゴの鰭の赤味や朱点を出すらしい。つまりアマゴは川虫を食べて、この色素を補給しているのだ。 そしてまたこの沢ではカロチノイドを含む生物である沢蟹をよく見かける。 真っ赤な朱点を持つアマゴと沢蟹がカロチノイドという色素で繋がるような気がしてならない・・・ と、まぁこんな事を思いながら喰らう朝飯の菓子パンは美味い! わずか2時間半ほどの釣りなので食料は必要ないのだが、渓流で食べるとDAN・ZEN旨いので常にオニギリやパンを持ってくるのである。 この日は綺麗なチビアマゴ達に遊んでもらい、AM8:00前には竿を納めて帰路についた。 おしまい
 

 
HOME  MENU