山岳渓流・夏   2001年 7月 8日   晴れ     浅川 ・ 私

 

 
 今年、私が狙っていた難関ルートのひとつである、V沢連瀑帯の釣り下りに浅川を誘って挑んだ。 この連瀑帯の上流と下流には釣場があり、そこには純粋のヤマトイワナが生息している。
当然、中間に位置するまだ見ぬ連瀑帯の滝壷には良型で多くのイワナがいるのでは...と予想したのだった。
 
 土曜の夕方に下流域の釣場まで歩き、私はテント場の準備。浅川は辺りが薄暗くなるなか竿を振り、酒の肴として1匹の美しいヤマトイワナが酒宴に華を添えた。
 私がほろ酔い気分で素足を投げ出して飲んでいると、チクリと足の指に痛みを感じた。
 「見てくれ」 と浅川にライトで照らしてもらうと、なんとミヤマクワガタ♀が指を挟んでいるではないか!  「きっと、足の臭いに誘われて来たんだ」 と笑いつつ、これも獲物として捕獲した。
 
 南アルプスの朝は寒く、浅川も私も寝不足気味のままPM4:30から垂直方向へグングン登って行った。高度を稼ぐような登りの山道の連続に浅川は愚痴ばかりこぼしているが、これは浅川の調子の良い証拠だ。 口数が減りバテ始めてきた頃、ようやく目的の入渓点である支沢の源頭から下り始めた。
 浅川は相変わらずのバカなが、私は渓流シューズに履き替え所々に咲く高山植物の花に見とれながら沢を降りていくと、水溜りに1.5cmほどのメダカのような魚達を見つけて手ですくい上げて見ると、パーマークのはっきりしたイワナの稚魚で
 「おお、いるいる」 と思わず嬉しくなる。
 小淵が点在する渓相となってきたので竿を振り始めると、すぐに20cm前後のイワナが釣れたが、魚体を手にして見ると白斑の目立つニッコウイワナ混じりのヤマトイワナで落胆してしまう。
純粋ヤマトの生息域であるこの源流にニッコウイワナを放流してしまった人がいる...とは聞いていたがどうやら本当の事のようだ。  ここまでもか...
 早急な純粋ヤマトイワナの移植放流の必要性を感じた。
それでも地元の人がいう 『ニッコウ混じりは殺してしまえ』 とは出来ずにこれを水に還した。

 快適な釣場は長くは続かず、すぐに連瀑帯に行き当たり竿を仕舞った。安全確保の為の登攀具を積極的な遡行武器として使うのには少々抵抗があるが、未知なる連瀑帯の魅力にはかなわず懸垂下降・ユマーリング・空中懸垂・ルート工作にとザイルで何度もピッチをきりながら、途中で竿を出しながら滝場を下降していった。
 
 途中、大滝の右岸壁にザイルを垂らして斜め下に下降していった。最初に私が降りていきバンド上で降りてくる浅川を待っていると突然、
ア゛ッ  浅川が足を滑らせ右に振られて宙吊りになった。
壁を甘く見て、ハーネスとザイルは繋がっていない!
浅川は握力だけで宙吊りになっている。

私は慌てて壁を右へと移動していき、浅川の真下にまわり込み
ショルダーーーーーッ
私の肩を足場にして浅川はなんとか元のルートにまで戻った。
 なんとかピンチを凌いだ浅川だが、ショックでウンチを漏らしてしまった小学生のような表情だ。
こんなとき、一旦ビビッてしまったショックで続く登攀に際して腰が引けて危険となりやすい。
ここは休憩をして行動食をとり落ち着く。
 後で考えれば、この滑落→宙吊り→ショルダーの場面は 『ファイト一発!』のCM のようで、写真に撮りたかったが、実際にはそれどころではなかったのだ。
 実は、滝の上でカッコ良く写真撮影をキメようと、今回はザックに “リポD” を入れてきたのだが、そんなこんなですっかり忘れてしまっていた。
 こんな緊張の連続に妙に喉が渇き、川床に降り立つ度に足元を流れる南アルプス天然水を
ゴクリ とやる。  うひゃ〜〜〜〜〜 美味い!   もちろんタダだ!


...とそういえば、
      以前、夏に南アルプスの渓深くに入ったとき、仲間のシンヤがザックから何やら取り出して飲んでいた。  なんと!町のコンビニで買ってきた生温かくなったミネラルウォーター『南アルプスの天然水』。 このペットボトルを開封して飲んでいるではないか!?
 それを見て皆、大笑い!
 ワ〜ッハハハハ! 「バカだ!」
         「せめて “六甲の・・・・” にしろよ!」  「買ったのか?」 
    とすぐ傍の岩清水を、うひー冷てぇ!と言って飲んでみせた。  
   ...こんなエピソードを思い出すと、今でも笑ってしまう。


 今回、ルートを誤り崖上の草付き急斜面を右往左往上下しながら下降ルートを探したが、どうしても40mザイル1本では足りずに来たルートを戻って大高巻きをした...等のロスタイムが多かった。
 その為、行動時間の1割が釣り、9割が登山と滝場の攻略になってしまった。 この釣行?山行?は生粋の渓流釣り師の浅川にはすこぶる不評で、
 「また騙された!(笑) いつもお前にはヒドイ試練を与えられるヨ」
...とボヤきながらヘロヘロになって下山してきた。
 そうそう、問題の釣果は浅川か25cmまで、私が28cmまでと、またしても期待とていたような大物は見ることは出来なかった。狙っていた連瀑帯の滝壷は土砂の流入で浅くなっていた事もあり、予想より釣り場としての価値は低かった。それでも各ポイントでは必ず魚信があり、そのほんどで小型ではあるが純粋ヤマトが出迎えてくれた。
 

春: 2001. 4.15.

夏: 今回
 連瀑帯の最後、春には雪崩となっていた場所に降り立つと、そこには見事なスノーブリッジが残っていた。 そろそろ崩れるかな。
 釣りとしては、ゆっくりと竿を振れるものではなかったが、この連瀑帯を下りとはいえ突破できたのは達成感があり自信になった。
怪我も無く、残置ハーケンも無く帰って来れたのだから、まぁイイか。
...と自分を納得させるかのように疲れ果てて帰ってきた。

 
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