雪中初物      2001年 3月11日  晴れ    私

 


  私達のような三流渓流マンでも解禁が近づくと、 ソワソワとしてどことなく落ち着かない気持ちになる。 そして、この禁断症状は解禁後、シーズン初の魚体を拝むまで続くのだが...
 先週、大雪のために竿を振ること無く撤退し、なんとも空しい気持ちになっていた為、今週もとりあえず初物を拝みたい一心で、単身深夜の山道に車を進めた。 ウルサイほどの風が吹く中、カップ酒をカーッ と煽って車中泊。 翌朝、少々寝坊してAM5:30、冬山の装備で南アルプスの懐深くへ歩き出した。
 雪の積もった荒れた林道を歩き、途中から急なガレ雪渓をピッケルとアイゼンを効かせて延々と下って行き雪中の渓、Sの川床へと降り立った。
 目の前には、いかにも美味しそうな大トロ淵があり
「大物はこんな所で厳しい冬を越すんだろうなぁ〜」 と独りほくそ笑みつつバカながに履き替え、冷たい指先で丁寧に餌を付け竿を振った... かなりネバリ強く何度も竿を振ったが、アタリ無し。なんかイヤな予感...。
 その後いつもの様にピンポイントで狙い、足を使って距離を稼ぐ釣り方に切り替えた。
そのうちに緩い流れから鈍いアタリを感じた!
おっ、いよいよ初物!と合わせて取り込んでくると、水面下にはドジョウの様な魚体が...「あれっ、ドジョウ?まさか、」
  「イワナかな?」
 上げてみると鉛筆のように痩せて、黒くサビの入ったアマゴだった。しかも、パーマークが真ん丸だ。
「おぉ、おぉ、よく冬を乗り切ったなぁ」と可哀想なその魚体を見てリリースした。稚魚は別として20cm前後のアマゴは4、5匹釣れたが、全てこのように痩せて黒くサビの入った魚体であった。

 余談だが静岡県の淡水魚を記した古い文献によると、県内の放流アマゴは元は富士養鱒漁協・気田川漁協の養殖で、このルーツをたどると長野県や岐阜県産のものにたどり着くそうである。さらに背中から体側にかけての水垂れ型の細長いパーマークのアマゴは県内河川では放流物と思われ、パーマークが円形又は楕円・横ハート型のものは大井川や狩野川系の天然物と思われる、 と記してある。 今回はこの真ん丸パーマークのアマゴが半数以上を占めた。

  まだまだ水温が低い為か餌の食いが遅く、私が2、3投した後に糸を垂らしたまま竿を置き、ゆっくりと小便をしてから竿を持つと釣れていたりする。  今回は車から釣場までのアプローチが長いため3時間程の釣りとなったが、久しぶりの渓流釣りを楽しみ満喫し、渓を後にした。 時間にすると、ほとんど冬山登山でちょっと渓流釣りという釣行となった。  車までの帰路、単調な林道歩きをしていると前方に数匹の猿を発見!
私のサングラスに防寒マスクと花粉症マスクという妙ないでたちにビビッたか、猿どもは谷へと散って逃げ下からこちらを覗っている。林道歩きに飽き飽きしていた私は小石を投げ、奇声を発し猿をからかっていた。私がエテ公どもをイジメて優越感に浸っていると、その直後頭上の崖からガラガラ と拳から頭ほどの石が幾つも落ちてきた!脚の疲れも忘れて、猛ダッシュ!
落石のほとんどは防護ネット内で留まったが、危ないトコだった。お猿さん、ごめんなさい。
車での帰路の途中、釣果が気になって仕方が無いバカなが隊メンバーの吉田や浅川から早速、電話があり
  「おぅ、どうだった?」 と聞くので 「尺だ!」 と脅かしてやろうと思ったが...
  「ん〜、23cmが最高で、23、22cmの2匹をビクに入れて、あとはサビサビでリリースだ。」
  「数はでるが型がでない、ぬくとく(暖かく)なれば面白いんじゃないか。」
 と、私が答えると、ホッとした様子で
  「そうだろ、なぁ、やっぱり〜」
  「んじゃ、安全運転でな」
    ...だって。


 
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