2001年 雨中の旅  2001年9月9日 雨  大ちゃん ・ 私   

 

 
 インターネットで知り合った遠くの釣人と初対面で即入渓する。
こんな事は自分のこととして、あまり考えていなかった。
ところが今回の一週間前、ネット上でよく交流していた北アルプスの猛者『大ちゃん』から具体的なお誘いがあり金曜日に急遽、南アルプス釣行が決定した。
 「大ちゃんがこちらに来るということは...私が案内するのか」 決まってから慌てた。
ホームページを見たり話に聞く限り、北アルプスの渓流魚はこちらと比べものにならない程、型・数ともに良いのである。
そんな好釣場で長年活躍してきた大ちゃんが南アルプス南部に来るとなればヤマト岩魚か、綺麗な源流アマゴを釣って楽しむしかないだろう。
 あいにく台風が近づいているので、日曜日の天気は悪いようだ。
さらに大ちゃんは風邪をひいていて、私は腰痛気味である。
私はエスケープし易く、実績のある沢を思い巡らす。
山ヒルの有無、山小屋の有無、茸類の有無、南アルプスらしい渓流かどうか?などと考えてしまう。 結局 「まぁ、会って相談してみるか」 と土曜の昼にJR藤枝駅で初デートにでも行くような心境で待ち合わせた。 いよいよ大ちゃん本人との御対面。
インターネットではウンチ話やエロ話までしているのに、いざ会うとなると妙に照れ臭かった。 インターネットでの人のイメージ、そして実際に会った時の印象。
南アルプスまでの車内での会話で私の大ちゃんへのイメージは概ね当たっていた。
好きな事には労を問わず夢中になるタイプで、強い男が持つ優しさが感じられ、体育会系の兄貴ィ!といった雰囲気だ。 一方、大ちゃんの側は私と会って話すと 「イメージと違いますねぇ」 とのこと。恐らくインターネットでの私に弾けた型破りな印象を受けたのかも知れない。 しかし本当の私は物静かなジェントルマンなのら。 ウッシッシ
 
 そんなこんなで話しながら南アルプスまでの長いドライブをしつつ、途中で温泉に入りつつ、山のロッジで一杯やりつつも目的山域へ。 しかし、なんと車停め地点には、すでに3台もの車が!私達は他の渓流マンの誰もがそうであるように(?)その車内を覗き見て想像力をフル回転させた。
 
登山者か? 沢屋か? やっぱり釣人か? どの辺りに入っているのだろうか?あたぁ(後は)運だ! 薄暗くなり始めてきたので荷をまとめて、いざ山道へ出発。 ヘッドライトの光を頼りに山道を歩いて行き、沢辺にテントを張った。
 ぶひ〜 一汗かいた後のビールがまた美味い!
晩飯は酒のツマミばかりの質素なコンビニ食である。
それでも酔うには充分な量のビールと酒を持って来た。 それが何より心強いのだ。
「そこの沢はなぜか小さい物は居なくて40cmからですわ」
 「へぇ〜っ、この辺じゃあ30cmで大威張り、 40cmで名人・神様、 50cmで大嘘つき、 60cmで病院行きですよ」
 「イイなぁ〜、来年は北陸遠征したいなぁ〜」

...などと釣場の話、魚の話、道具の事、ホームページの事、そしてエロ話、、、と夜はふけていった。
 
 雨の降り出した翌朝、辛い朝一番の急登の途中で、先行する私は意地悪にも少し無理をして足を速めてみたが、やはり大ちゃんはビッタリと私の背後を追走してきて、むしろ私が焦ってしまい屁も出来ず!? やはり今回、この程度の楽々コースでは大ちゃんの限界を垣間見る事は出来なかった。
 山道を登り降りして、区間新記録の速いタイムで川床に到着。
最初は2人ともミミズの餌釣りで遡行して行くと、すぐ砂地にくっきりとした足跡を発見!
昨日あたりに入渓済みなのだろう。 釣場は小さなポイントの連続に枝が覆っていたりするので、大ちゃんはすぐに提灯仕掛けに変えてこれに対応。
さらに魚影が見えても食いが悪ければテンカラと、釣場環境・魚の反応によって素早く対応した釣り方に変えている。さすがだ大ちゃん!
身のこなしだってバカなが隊のドタバタ遡行と違い、スルスルと移動しシャーッと竿を振る
無駄のないスマートな動きが私の眼にはとても新鮮に映った。
 
 今回初の獲物は大ちゃんが枝が覆う淵の泡下から、3連ガン玉の提灯仕掛けで釣り上げた。 獲物は体側から背中にかけて白斑のある、私が勝手に“混じり”と呼んでいるヤマト岩魚で、そのなかでも背中にまで斑紋があるものは、もうニッコウ岩魚にそっくりである。
大ちゃんはこの“混じり”を手に取って 
 「なんや、同じやなー」
私は慌てて、 
 「いやいや違うんです、コイツは混じった奴なんです」
 「大ちゃんに見せたい純粋ヤマトじゃないんです」
 
さらに雨は激しく降ってきたが、それなのに南北アルプスの釣りバカ達は何ら迷うことなく尚も、竿を振って行った。 私は稀に毛鉤を使うくらいで、テンカラ竿は振ったことがなかったので、大ちゃんにテンカラが出来るような場所かどうか聞かれても、ウ〜ンと考えてしまうのだが、目の前のラインの長さを見て 「ちょっと厳しいですかねー?」 といい加減に答えた。
ところが大ちゃんがテンカラを振り始めると、ラインは頭上の枝葉の隙間で彎曲した楕円の弧を描きコントロール良く毛鉤が着水している。
 「へぇ〜、上手いもんだな〜」
私は眼から鱗で、またまたサスガ!大ちゃん。
しかし魚影は大ちゃんの毛鉤には反応するのだが、なかなか食いついてはこない。
 一方、私は未だボーズ状態であったが焦りは無かった。
なぜなら、この釣場は上流へ行くほどによく釣れるのである。

 釣場も半ばに差し掛かり、沢の落差がでてきた辺りで前方の岩陰からチラチラと竿先が見え隠れしている。「ま・ま・まさか!」 そう先行者だ。
 思わず大ちゃんと顔を見合わせた。
私はカラ元気を出して、作り笑顔で手を振りつつ近づいて行くと、向こうの2人組もまた驚いた表情でこちらを見ている。そりゃそうだろう、このドシャ降りの雨である。
私はこの釣場で人に会ったのは初めてだったので少々ショックであった。
 彼等と話すと、どうやら昨日釣り上がってキャンプをして、今朝は同じルートを釣り下って来たらしい...という事は、これより上の釣場は連日攻められているのか。
 せっかく遠路を大ちゃんが来ているのに、ドシャ降りで先行者。 まったく運が悪い。
最も期待していた区間を目前にして、あえなくテント場まで撤退した。
 戻る途中、枝沢の滝場やブッシュ帯の通過でも大ちゃんはスルスルと軽快な身のこなし。
さすが!北アルプスの猛者である。
 テントに到着して、退却ムードで一休みした。
 「先行者のあと、一晩じゃあ難しいのかなー?」
 「2日、3日は食いが厳しいようですわ」
 「そっかー、ツイてないなー」
 苦肉の策で、最も入渓し易く期待薄であるこのテント場からの最下流部の釣場で竿を振ることにした。この時点で目的のヤマト岩魚は先程の先行者のビクの中にチラリと見たのみであった。
 『どうしても大ちゃんにヤマト岩魚を釣って見てもらいたい』
もう祈るような気持ちで再度竿を振ったが、やはり状況は厳しかった。
私がボーズ逃れのチビ岩魚を釣ったのみで、大ちゃんは竿を置いて写真撮影を楽しみだしていた。 残りの釣場もあとわずか、ゴルジュの淵が連続する渓相で前方の大ちゃんが何か釣り上げたようだ!私は急いで駆け寄った。
岩魚は全く白斑が無く、体側の柿色斑も薄く少ない。 
 「ヤマトだ!」 「コレですよ!これこれ!」
 「ほんまやー」 「全然違うわ!」
 
 昨日の長いドライブ、ドシャ降りの雨、そして先行者。ジラしにジラされて、やっとヤマト岩魚との対面。
27cm程だろうか、長年数々の大物を釣ってきた大ちゃんも喜んで、2人で子供のようにはしゃいで記念撮影である。 大物釣りとも数釣りとも違う感動がそこにあった。同時に案内した者としてホッとした気持ちもあった。次に滝を低く巻いた最初の小淵で竿を伸ばすと一投目ですぐヒット! 先程と同型であったが、これは薄い白斑のあるヤマトであった。
「イケる、イケる、まだ釣れるかも知れないゾ!」
終点となる滝はもうすぐそこに見えるが一投一投に再度気合が入る。 私は普段からよく魚が留まる緩く浅いポイントに投餌した。
 
ググッ  おっ、手応えのある引きだ! 岩の裏で魚体がよく見えないまま浅瀬に獲物を引き上げた。これも27cmほどのヤマト岩魚だった。
すかさず大ちゃんの方を見ると、ほぼ同時にチビ岩魚を釣っていた。
大ちゃんは岩をピョンピョンとカモシカの様に駆け降りて来てお互いの魚体を覗き込み、キャッキャッと女子高生の様にはしゃぐ。
そしてまた写真を撮りまくる、むさくるしいオッサン2人組であった。
 これでようやくお互い9寸ほどの純粋ヤマトを釣ることが出来た。
なんとか私の案内役は首の皮一枚つながったかな?とホッとして下山した。
  大ちゃんは心・技・体、そしてエロさとユーモア、その全てを兼ね備えた渓流マンであった。私達バカなが隊は到底、後者のエロさとユーモアしか肩を並べられないだろうが、今回このように一緒に釣行させて頂いて心・技・体、こうあるべき姿を学んだような気がした。
 
〜まんが釣行記〜
きたで、きたで!
よっしゃ、ヤマト岩魚や!
次はゴッツイ奴、
大ちゃんのチンチンぐらいの釣るでー♪

ぴよよ〜〜〜ん
トホホ、これが現実や
 
 帰りは車で一気に藤枝まで戻り、ちゃんこ鍋を食べて冷えた体を温めた。
北陸のアノ大ちゃんが来た! ということで、待ち構えていたバカなが隊の吉田・シンヤ・浅川がちゃんこ店に集結。 『あまごの誘惑』で御馴染みの川虫くんも暴風のなか自転車をパンクさせながらも駆けつけてくれた。
 みんな渓流マン同志、話は尽きない。アッという間に一杯目のビールを空け、アッという間の閉店時間まで楽しく、可笑しく宴は続いた。 今になってみると、まだまだ話し忘れた面白いネタがたくさんあったので、是非また飲みましょう!
 
「ぎょう虫検査の肛門に貼って剥がすセロハン!」
「アレ、女の子が学校に持ってきたのを匂い嗅がへんかった?」

「それは無かったなー、身体検査は覗きに行ったけど」
「オマエはおっぱいモミモミして親が呼び出されたじゃないか!」
「みーんな変態だー」


 
大ちゃんの同釣行記
 

 
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