日曜釣行の限界に挑む   2001年8月19日  晴れ時々曇り    私

 

 
 登ってみたい山がある。  歩いてみたい渓がある。  会ってみたい魚がいる。
南アルプスの奥深い源頭部の渓 に数年前、ヤマト岩魚が放流されたと聞いた。
古い文献によると元々は魚が居ないエリアだったらしい、果たして現在どんな渓で、どんな魚が繁殖しているのだろうか? 自分の足と眼で確かめてみたかった。
 しかし目的地は遠く、日帰り釣行では極めて困難である。
ただし前日からの夜間登山で一晩で標高差2000mを稼ぎ沢を下れば、なんとかわずかな時間であるが目的水域で竿を振ることが出来そうだ...と予測した。
 土曜の仕事後、すぐさま車に乗り込み山を目指し 夕方6:15、登山道を登り始めた。
景色の無い真っ暗な登山道、自分の荒い息づかいだけが聞こえ、汗ビッショリになりながら頭の中で 「ビール!ビール!ビール!」 と唱えながら3時間、やっと古い山小屋に到着した。
 山小屋は私独りだけであったので気楽なものだ。
素っ裸になり全身の汗を拭いながら、一気にビールを飲み干した。 プヒ〜美味ぇ!
まるちゃんにFAXして頂いた沢ルートの資料に目を通しながら、酒をチビリチビリとやっているうちにヘッドライトの明かりに眼が疲れて眠くなった...
 
 4時間半ほど眠り、サンドペーパーのような満天の星空の中をまた歩いた。
雪渓の景色も、お花畑も、まだ薄暗いうちに通過してしまい勿体無い。
 空が明るくなり始め、雷鳥の親子が現れ私の前を先導してくれるように歩いて行くので嬉しくなる。稜線に出ると、雲海の向こうには富士山などの名峰が頭を出していて爽快な素晴らしい景色だ! まさか、日曜釣行の朝にこの景色を見るとは...
 「もう釣りなんてしなくたっていい、このまま縦走を楽しんでもイイかな?」
...とも思いつつ稜線沿いの登山道を歩いて行き沢源頭部に到着した。
 
雲海の富士山 赤い眉毛が可愛らしかった雷鳥 沢源頭部のお花畑
 
さぁ!沢下りである。
台風が近づいているので、ゆっくりなどしていられない。
途中の山小屋の管理人には
 「台風の雲と風が来るよ、どうしても沢を下るなら止めはしないけど...」
と、脅かされ少し不安になった。
 この沢の上半分は初めての遡行の為、時間配分が読みきれないのでAM10:00までには竿を納めることを決意して沢を下り始めた。
 沢の源頭部はせせらぐ小川の両岸に花が咲き乱れ、メルヘンチックな美しい景色だったが下って行くと倒木が折り重なり、とても釣りにならない渓相となった。
 
この倒木が魚の棲み家となっていたのだろうか。
渓相の良くなりだした所から竿を振り始めると、釣れる!釣れる!うっひゃひゃ! チビ岩魚の入れ食い状態だ。
 この沢のヤマト岩魚の魚体は元々、黄色が強いようだが今回のチビヤマトは腹と体側斑が真っ黄色というか、本当に眼に眩しい程に鮮やかなオレンジ色であった。 ポンポンと釣れる岩魚は揃って手のひらサイズの同級生ばかりで、たまにはコイツ等の親サイズを釣りたいのだが、それは欲のかき過ぎのようだ。
 
 1時間半ほど竿を振ったが、竿をたたんで滝を巻くこともあったので正味は1時間余の釣りだった。 まだまだこの先に未知なる難関沢ルートが待ち構えているようだったので、予定の10時には鉄の意志で竿を納めた。
 沢下りに専念して歩き始めると、次々に深淵からガブリときそうな好淵が現れ、鉄の意志が早くもグラつく。 ヨダレを堪えつつ涙を飲み、竿を出すことなくこれらの淵を通過した。
 滝を巻き下り、ガレ場をヘツり、ゴルジュを高巻き、あまりに延々と続く沢下りに飽き飽きし足は疲れて棒のようになった。
 
 途中、安易に古い残置トラロープに身を任せると、ブチチッ と音をたてたかと思うと
 バシャーン  落ちた...背中から浅い水溜りに落ちたのだ。 一瞬、何が起きたのかサッパリ分からない。幸いザックが背中を守ってくれたが、見上げると2メートルの高さから落下したようだ。 気を引き締めなければ!
 ...となおも延々と沢を下りて行くが、もうラスト近くなると滝や淵を巻くのが面倒になり
ザブザブと淵を泳ぎ、昨夜からの汗まみれで臭い体を流した。 冷たくて気持ちいい〜♪
サッパリとして淵の浅瀬で立ち上がろうとすると、「ううっ、重い!」 泳ぎのためのパッキングをしていなかったので、全ての荷が水を含みズッシリとザックが重くなっていたのだ。こんな初歩的ミスが続いて、まったく情けねぇ。
 それでもなんとか夕方には無事、車にまで辿り着いた。
 

この滝上からのスカイビュー
 
 お持ち帰りの魚こそ無かったが、筋肉痛というお土産ができた。
今回、天気が良く南アルブスの絶景を堪能でき、そして鮮烈な色をしたヤマト岩魚にも会え、所々にテクニカルな遡行も楽しんだ。今シーズン臆しながらも狙っていたロングルートだったので、とても達成感がある釣行であった。
 『日曜釣行では勿体無い、今度は連休をとって皆で来よう』 そんな沢であった。
 

 
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