狂喜乱舞    2001年 9月30日    曇りのち雨     私

 

 
 最近涼しくなってきて、もう9月も終わり、この水系の漁期最終日はちょうど日曜日であった。当然、入渓点の混雑は予想していたが、天気予報は“曇り昼頃から雨”でとてもジッとしてはいられない。あいにくバカなが隊員どもは祭りの準備や仕事やらで忙しいらしいので、私は単身ではあるが日曜の早朝に車を走らせた。
 先週、浅川と来たときには混雑していたX沢入渓点には、意外にも1台の車両もなく 「あれれー、昨日で釣りきられてしまったのかな?」 と拍子抜け。
すぐ上流の入渓点はどうかと行ってみると、そこにも先行車両は無い。
毎週日曜の早朝には必ずという程、誰かしら入渓している場所に誰もいないと、かえって不気味なものである。 私は迷わず、竿抜け区間となり易い中流域へと、ライトを照らし暗い山道を降りて行った。 川床に到着すると、意外なほどに水量が少なく落胆するが、天気予報の“昼頃から雨”に期待して、竿を振り始めた。
 最初、魚影はあるのだが、どうも餌の食いが悪い。
「産卵期で警戒しているかな?」
と、今一度、基本に立ち返り、身を低くして静かにアプローチし岩陰から竿を伸ばす。 それでも基本あっての応用ということで、きちんと手前からではなく、竿と仕掛けの射程距離内での最有力大物ポイントへといきなり餌を直撃させていった。
こんな調子で釣り上がって行くと、ポツポツではあるが、20cm前後のアマゴが釣れだした。 普段は高巻くゴルジュ部分も、水量が少ない今回は川通しで突破していく。
 
 
 そのゴルジュ入口付近で釣れた魚は、水面を引き寄せてくるときには岩魚かと思ったが、釣り上げて、その魚体を手にして見ると...
 な・な・なんじゃ、こりゃ!?
岩魚とアマゴの合いの子か? 雑種?イワメ?イワゴ?
体側には何か不自然なパーマーク、背中には頭までの流れ斑紋があり鯖のようだ。恐らく上流の岩魚とアマゴが交配したものであろう。
このような合いの子は長生きするのだろうか?大きく成長するのかなぁ? と、疑問が残るが、この後も同様の魚がもう1匹釣れた。
 
 尚も遡行していくと、いかにも産卵床にはうってつけの好ポイントが現れた。淵の左側は深く流れが速く、右側は浅くなだらかな砂礫のある穏やかな流れであった。 私は落ち込みの右脇の適度な水流で渦巻く一点のみに狙いを定め、岩陰を身を低くして射程距離にまで近づいた。ピチピチで活きの良いミミズを針に掛け、6.7mの愛竿をいっぱいに伸ばして振り込んで投餌した。
 餌は流れにのり、渦の底で回遊しているかのようだった。
ぐぅ〜ん   鈍く重いアタリ!
右手の浅瀬側に合わせて、そのまま少し強引に、一気に水面まで獲物を引き上げた! ここで岩陰から出て、流れに入って取り込みにかかる。しかし私はこの取り込み位置への移動で獲物へのテンションを緩めてしまい、結果、バラしてしまう場合が多いのだ。
 ここは右手の竿のしなりを維持しつつ、慎重に流れの中へと移動していきながら左手ではタモを掴んだ。獲物は尖った鼻先をわずかに水面上に出しながら、体を横にしている。 「このまま、このまま」 と、心で念じつつ、自分の方へと引き寄せてきた。
 「おおっ、意外にデカい!」 獲物は無事にタモに収まり、ひと安心。

魚体はすでに黒っぽく、くすみかけた色となって、頭はさらに顕著に黒味がかっていて産卵期特有の姿であった。 「おっ!尺はイッてるゾ!」
嬉しくなって魚体を陸に上げて、何枚も写真を撮った。
色こそサビがかり始めてはいるものの、まだまだ筋肉質で体格が良い。
 
 
 ビチビチと豪快に音をたてて跳ね回り体に砂を付けてしまうので、なかなか撮影にてこずっていた時であった。
ピャーーーッ   突然、コイツの精子がほとばしった!私の顔や足元に白い滴が飛び散ってきた。必死に子孫を残そうとしているのだろうか。 これで私の迷いは晴れた。食うには大き過ぎるし、剥製にする程でもない...この魚体をどうしたものかと思案していたのだが、沢に戻す決心がついた。
 最後に体長を計測すると、それでも33cm!前釣行記のアマゴに比べ、迫力こそ劣っていたが体長は同じであった。 これが私の最大リリース記録となった。
 タモに入れたコイツを緩やかな流れに放すと、慌てて逃げるでもなくスーッと流れるようにして落ち込み脇の白泡へと消えていった。
 「これでいいんだ、来年また楽しませてくれ」 私は流れを見つめながら、旨いコンビニおにぎりを喰らいつつ、どっぷりと自己満足に浸った。 こんな事を書くと、今回は釣った魚を全てリリースしたかと思うかも知れないが、そんな事はない。
27cm前後の綺麗なアマゴが釣れれば 「食べ頃サイズで美味そうだなぁ」 と、しっかりビクに入れてきたのだ。なんとも、気分次第なのである。
 
 昼頃になると天気予報どおり、パラパラと雨が降り始めた。
やっと待望の雨が降ったのだが、もうすでに27cm前後の美味しい食べ頃サイズを親兄弟の分ぐらいは釣ってビクに入れていて、もう満腹なほどに釣りを楽しんでいた。 もう帰ってもいいのだが、この地点はとにかく前に進まなければ帰れないような、エスケープルートの無い区間なので先を急ぐ。 釣師の性なのであろうか、すでに自分が気合抜けしていても、好ポイントが現れれば竿を振りたくなる。
雨の中を急ぎながらも要所では竿を振りつつ遡行していくと、20cm前後のアマゴやらチビアマゴ達が狂ったようによく釣れる。
 ボーズ寸前の無釣果状態でチビアマゴが釣れた時には堪らなく嬉しいのだが、釣れる度に餌を付け替えるのが面倒なほどによく釣れる時には、もうチビアマゴなどうるさい位である。
まったく身勝手なものだ...。

側線に沿ってサビている
 
 大物有望ポイントのみを一投だけと決めて竿を伸ばしていると、ゆったりと流れていた目印がピタリと止った。 「やいやい(しまった、しまった)、また根掛かりか」と、粗雑に竿を引きしならせると...
 「あれれーっ、釣れてるぅ〜!」 見える、見える! 大型のアマゴが水中の岩角にその横腹をぶつけていた!
途端に!... 
ぷわ〜ん  仕掛けが宙を舞った....バラした。
 
「なかなか大きかったなー」
 ダメと承知で、ミミズを新しく付けて同様にして流してみた。
こんな事をしても、再度釣れるわけが無いのだ。

 グワ〜〜〜ン   「えっ? ウソ!嘘!本当にきた!」 「バラした奴だ!」
私は慌てて、タモを差し出す暇もなく、緩やかな砂地にコイツを引きずり上げた。
と、同時にまたしても仕掛けが宙を舞った。
砂地では尺はある魚体がビチビチと音をたてて暴れている。

私は駆け寄ったが、必死に水に戻ろうとするコイツをなんとなく引き止めようとはせず、傍でただ見つめていた。獲物はすぐに水をとらえて深淵へと消えていった...。
 尺アマゴが大バラし後にまたすぐに食いついてきたのだ。
降雨の為だろうか? この季節のせいだろうか? とにかく楽しませてもらった。
それで充分だったのだ。 針は外れたものだと思っていたが、後で仕掛けをみると針が折れていた。どうせなら口から針を外してから沢に返してやれば良かったと、後になって悔やんだ。
 
 チヒアマゴ達は夏場と何ら変わらない綺麗な体色をしていて、元気一杯だ。大きなミミズにも喰らい付いてくるし、果敢にも水面上の目印にライズしてくる奴もいる。 チビアマゴの引きを楽しみながら淵を泳がせて寄せてくると、出てくる、出てくる。チビの後ろを少し大きな奴がついてくる!そのまた後ろを、もっと大きな奴が追っている! 「あぁ...」 と、思わず声を洩らしてしまう。この後、餌を付け直して再度投餌すると、なんともアッサリと先程の“もっと大きな奴”釣れてしまう。泣き尺サイズである。 いったいどうしたんだ、今日は...!?
 
 今度はこれでもか!と、岩を挟んで足元から2m程の魚影を狙って餌を流してみると、あっさりと23cm位のアマゴ釣れた。
これをリリースしてして、今のポイントを見ると2匹のアマゴが楽しそうに戯れているではないか!?「まさかぁ〜」 と、思ったが、また餌を流してみた。おぉ、見える、見える! 1匹の魚影が餌に向かってスーッと、近づいて...と、その時! 水中の岩陰から、ひときわ大きな魚影が現れて、餌に近付いてきた奴に体当たりしたかと思うと同時に、グゥ〜ン という引き! あれれーっ!私は急いで、タモですくい捕るようにして取り込んだ。
タモの中を見ると、なかなかのサイズで、まだサビが少なく美しい姿を保っていた。
もしやと思い陸に上げてメジャーを当てると、30.5cm。 本日、3本目の尺物であった。
 「秋の収穫祭(バーベQ)のテモンストレーションに良いかな」
 「実物を持って帰らないと、シンヤが“嘘だ”とか“修正画像だ”とか言って信じないだろうな」

と、思いを廻らして、結局このアマゴをビクに収めて帰路についた。
帰りの雨の山道はもう涼しく、ヒルもいるのかいないのか這い上がって来ないので、とても歩き易かった。
 ビクに入れて持ち帰ったアマゴは27cm位を中心に、最後の尺物も含めて計6匹。
どうやら産卵期の雌は特に餌の食いが悪いようで、このうち5匹が雄アマゴで、胃の中は空っぽであった。 これらの獲物は今シーズン、いろいろと迷惑を掛けた私の家族達に塩焼きで食べてもらいました。
 
山や渓流、そして皆さん、今シーズンもありがとう!
来年も、またお世話になります。
 
See You Next Season! Bye−Bye
 
 

 
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